第七十四話 さっそくドラちゃんに乗って地方へ
ドラちゃんの力が戻ったのもあり、試しに王都の近くの領地に遠征してみようという事になりました。
ここは、馬車では三時間かかってしまい、往復だと六時間かかる。
日帰りでも行けないことはないけど、何か問題があると泊まりになってしまうところです。
因みに、王都直轄領なので手続きはとても簡単だそうです。
先ずは、王城の横にある軍の施設に集合します。
「ドラちゃん、この場所だけど分かるかな?」
「キュイ!」
ヘンリーさんがドラちゃんに地図を見せながらあれこれ指示をしていたけど、ドラちゃんもヘンリーさんの肩に止まってふむふむと頷いていた。
その間に、必要なものは僕とスラちゃんのアイテムボックスにしまいます。
準備完了なので、さっそく現地に向かいましょう。
シュイン、ぴかー!
「グルル!」
ドラちゃんも大きくなったので、僕たちも鞍に乗り込みます。
準備が整うと、ドラちゃんが大きく羽ばたきました。
バサッ、バサッ、バサッ!
大空に羽ばたいたドラちゃんが、一気に目的地に向けて飛び立ちました。
物凄いスピードで大空を飛んでいきます。
というか、この前よりもスピードが上がっている気がするよ。
「凄いわね、景色があっという間に流れていくわ」
「こんな景色を見れるなんて、貴重な経験ね」
シンシアさんとナンシーさんは、周囲の景色に珍しく大興奮しています。
もちろん、僕もスラちゃんも眼下の景色に興奮しています。
そして、三時間かかる距離を僅か二十分で着きました。
「これは凄い、本当に凄いぞ。予想以上の成果だ」
「キュー!」
小さくなったドラちゃんを、ヘンリーさんがべた褒めしています。
ドラちゃんも、褒められたのと空の旅が楽しかったのでとってもご機嫌です。
では、目的の森に向かいましょう。
といっても、実は目的の森の目の前に着陸しました。
「ここは、森の奥に行かなくても直ぐに嫌な感じがしますね」
「私もそう感じるわ。じゃあ、ナオ君とスラちゃん頼むわね」
そこまで黒い霧の規模が大きくないように感じたので、頑張ったドラちゃんは休憩をしてもらいます。
シンシアさんの指名も受けたので、僕とスラちゃんはさっそく力を溜め始めました。
シュイン、シュイン、シュイン、ぴかー!
「やっぱり、ナオ君とドラちゃんの魔力が上がっているわ」
「というか、今まであの三人の元でいたから存分に魔法を使う場面がなかったのでしょうね」
「ナオをこき使っていたなんて、やっぱりあの三馬鹿は許せないわ。潰してあげれば良かったわ」
なんだか、シンシアさんとナンシーさんはともかくとしてエミリーさんが不穏なことを言っているのは気のせいでしょうか。
でも、僕もスラちゃんも確かに自分の魔力が上がった気がします。
ナンシーさんのいう通り、最近は存分に魔法を使っていますからね。
「ふう、これで大丈夫です。周囲も大丈夫そうです」
「じゃあ、ナオ君とスラちゃんは少し休んでいてくれ。我々で周囲の確認を行おう」
僕たちに負けていられないと、ヘンリさんたちが気合を入れて森の中に入りました。
念の為に周囲を探索魔法で確認したけど、特に僕たちを狙っている感じはありません。
アイテムボックスからサンドイッチと飲み物を取り出して、スラちゃんとドラちゃんと分けます。
王都から離れているのに弱いながらも黒い霧が発生するなんて、暗黒魔法ってある意味凄い魔法なんだ。
こんなことをするなんて、一体誰が後ろで糸を引いているのかと思ってしまった。
でも、僕ももっと強くなれそうだし、頑張ってみんなの力にならないとね。
ガサガサ。
そして、三十分くらいでヘンリーさんたちが森から出てきました。
特に問題ないそうで、このまま村に移動して代官に報告するそうです。
村は、ここから三十分くらい歩いたところにあるそうです。
「まさか、王都からここまで来るよりも、森から村まで歩く方が時間がかかるなんてね」
「そう思うと、やっぱりドラちゃんの飛行能力は凄いわ」
「ドラちゃんには、あとでご褒美をあげないとね」
女性陣が色々と言っていますが、僕も歩くほうが時間がかかるんだとちょっとくすっとしちゃいました。
色々な考え方が変わりそうで、改めてドラちゃんの凄さを知りました。
そして、村に着いて代官に報告します。
「あの、殿下はどこかに泊まられたのでしょうか。こんなに朝早くに対応されていますので……」
あっ、ヘンリーさんが村長さんに報告したら、村長さんがとても信じられない表情をしていました。
うん、僕たちもその気持ちは良く分かりますよ。
「村長、こちらにいるドラゴンが巨大化して背中に乗ってきた。帰る時にお見せしよう」
「キュー」
「はっ、はぁ……」
うん、村長さんの思考が追いついていない。
これは、ヘンリーさんの言う通り直接ドラちゃんが大きくなったのを見せてあげたほうが良いですね。
物凄く時間が余ったので村の教会で治療などの奉仕作業を行い、僕たちは王都に帰ることになりました。
シュイーン、ぴかー!
「グルル!」
「「「お、大きくなった!」」」
村の外れでドラちゃんが大きくなると、集まった村人は度肝を抜かれていました。
村長さんなんか、驚きすぎて腰を抜かしていました。
「お、王子様はドラゴンを使役しているのか……」
「王族って、本当に凄いんだ……」
大の男も、目の前のことを理解しきれなくて思わずポカーンとしていました。
そんな中、僕たちは再びドラちゃんに乗って王都に旅立ちました。
「うーん、朝早かったとはいえ、まさか十一時前に王都に帰ってくるとは」
「普通の人は信じられないでしょうね」
「「キャッキャ!」」
「キュー」
王城に着いてジョージさんとマリアさんに報告するけど、ドラちゃんの飛ぶ速さは完全に予想外だったみたいですね。
当のドラちゃんは、アーサーちゃんとエドガーちゃんといつもの追いかけっこをしています。
このギャップが、ドラちゃんの魅力なんでしょうね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます