第七十三話 ビックなドラちゃん

 事情聴取が続く中、僕たちはあまり王都から離れないようにしながら活動していました。

 予想外の情報とかが集まってきて、分析するのも大変だそうです。

 そんな中、遂にドラちゃんの体調が完全回復したみたいです。

 毎日いっぱい食べて、いっぱい動いて、いっぱい寝ていたのもありそうです。

 そこで、さっそく最大サイズになったらどうなるのかを確認する事になりました。

 流石にいきなり王都の中で大きくなるのは問題なので、王都の防壁を出て少しのところで行います。


「「わくわく」」

「あー!」

「ふふ、こんなにワクワクするのはいつ以来かしら」


 そして、いつもの勇者パーティだけでなく何故かギャラリーもついてきました。

 アーサーちゃんとエドガーちゃんに、セードルフちゃんです。

 しかも、外出訓練を兼ねるといって、ワクワクしているシャーロットさんまでついてきました。

 流石に、シャーロットさんは車椅子に乗っています。

 でも、だいぶ歩けるようになったので、来週の安息日に遂に一緒に買い物に行く事になりました。

 僕も、とっても嬉しいことです。

 しかも、中にはシャーロットさんに気が付いて手を振っている冒険者や町の人もいます。

 シャーロットさんの人気は、本当に絶大ですね。


「キュー」


 ドラちゃんもやる気満々って感じで、ちびっ子三人の周りを飛び回っていました。

 では、さっそくドラちゃんの最大の大きさになって貰いましょう。


 シュイン、ぴかー!


「「「おおー!」」」


 ドラちゃんが黄色く光り輝くと、一気に体が大きくなっていきます。

 この前大きくなった時の大きさを一気に超えていき、更に大きくなっていった。


「グルルルル!」

「「おー! カッコいい!」」

「おおー!」


 そして、最終的にドラちゃんは十メートルを超える大きさに成長しました。

 黄金色に光るウロコもとっても綺麗で、大きな羽も生えている様はまさにドラゴンと言えましょう。

 ちびっ子三人はドラちゃんの変身を見て大喜びで、テンションマックス状態です。

 でも、ドラちゃんは大きくなってもドラちゃんのままでした。


「「すごーい!」」

「おー」

「ふふ、神々しい感じね。とってもカッコいいわ」

「グルル」


 大興奮なちびっ子三人は、地面に伏せたドラちゃんをペタペタと触っています。

 シャーロットさんもドラちゃんの鼻先を撫でていて、ドラちゃんも気持ちよさそうにしています。

 実は突然大きなドラゴンが現れて通りかかった人もビックリしていたけど、そのドラゴンの鼻先をシャーロットさんが撫でているので、シャーロットさんの配下にあるドラゴンと認識されたみたいです。

 うん、シャーロットさん効果が凄まじいですね。

 その間に、用意した鞍をドラちゃんに着けて、ズレ落ちないように調整していました。


「陛下、完了しました」

「それでは、テスト飛行を行おう」

「「いーなー」」

「うぅー」


 無事に大きな鞍をつけ終わったところで、人を乗せて空を飛べるかテストを行います。

 もちろんちびっ子三人は搭乗許可がおりなかったので、地上でお留守番です。

 最大六人乗れるので、僕たちと近衛騎士一人が乗り込みました。

 鞍は取っ手みたいに掴むところと、万が一に備えてベルトみたいに体を固定するところがあります。

 スラちゃんは、僕の懐に潜り込みました。

 シアちゃんも、エミリーさんの服に潜り込んでいます。

 全員装着を終えて、準備完了です。


「じゃあ、頼むぞ」

「グルル!」


 バサッ、バサッ、バサッ。


「「「おおー!」」」


 ヘンリーさんがドラちゃんに空を飛ぶように頼むと、ドラちゃんはひと鳴きして羽ばたき始めました。

 すると、段々と空へと飛び上がっていきました。

 地上では、ちびっ子三人はまたまた大興奮しながら僕たちを見上げていました。

 そしてドラちゃんは、一気にスピードを上げました。


 ヒューン!


「ドラちゃんが魔法障壁みたいなのを出してくれているので、風は感じないですね」

「この速度では、何もしなかったら風圧で吹き飛ぶだろう。しかし、これは凄いな」


 空の旅はとても快適で、こうして普通にお喋りもできます。

 この前行った村をあっという間に飛び越え、ワークス子爵領も通過しちゃいました。

 テストは十分ということで、ドラちゃんは王都に戻っていきました。


 バサッ、バサッ、バサッ。


「「おかえりー」」

「おー!」


 元の場所に辿り着くと、ちびっ子三人が元気よく出迎えてくれました。

 僕たちは鞍から地上に降りたけど、何だか凄い体験をしたね。


 シュイーン、ぴかー。


「キュー」


 そしてドラちゃんが小さい姿に戻ると、鞍が消えてしまいました。

 すると、スラちゃんがドラちゃんと何かを話しています。


「ドラちゃんの装備みたいな扱いなので、大きくなったらまた鞍が現れるそうです」

「この辺も、昔の伝承と一致している。しかし、これで遠くにいく手段を手に入れたことになる」

「そうね。地方で浄化しないといけないところがあるけど、これで直ぐに向かうことができるわ」


 ヘンリーさんとシンシアさんも、納得の検証結果だった。

 やっぱり馬車で移動するには遠すぎるところもあるらしく、今まで対応を断念してきたという。

 王族だから、公務が忙しいんだって。

 これなら、日帰りで遠くに行くこともできます。


「キュー」

「「まてー!」」

「あー」


 当のドラちゃんは、いつの間にかちびっ子三人と追いかけっこをしていました。

 そんな三人と一匹を、シャーロットさんが温かい目で見守っていました。

 この後はみんなで王城に行くけど、ドラちゃんにはご褒美で美味しいお肉をあげないとね。

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