第七十一話 三人への判決
三人の裁判は、普通にいけば順調に終わるはずだった。
既に判決内容も確定していて、弁護役の役人もほぼ弁護するだけの材料はなかった。
身勝手で自分勝手で、更に自分に都合の良い解釈をしていた。
何度となく行われた聴取でも、自分勝手な主張を繰り返していた。
聴取の際にも暴れていて、聴取担当の兵に頭突きをしたりもしていた。
そのため、裁判も余計なことを言わずに最低限必要なことだけ伝えることにした。
「判決、被告を二十年の強制労働刑とする。更生が見られない場合は、その刑期を延長する」
「……」
最初に刑期を言い渡された茶髪の短髪は、ポカーンとしながら判決を聞いていた。
聴取の様子を受けて鎮静作用のある魔法を掛けられていたとはいえ、裁判の雰囲気に飲み込まれてそれどころではなかった。
実際は小心者という、本人の性格が垣間見える結果となった。
本人が罪状を認識したのは、強制労働施設に着いた時だった。
どんなに喚いたとしても既に刑期は決まっているし、反逆罪は一院制です。
これから、本人が反省するまで長期の刑期が待っている。
しかし、茶髪の短髪はまだ扱いが良かった。
「判決、被告を四十年間の重犯罪者施設での強制労働刑とする。なお、本人に更生が見られない場合はその刑期を延長するものとする」
茶髪のツンツン頭と緑髪の魔法使いが判決を受ける際、肝心の被告二人の姿が法廷になかった。
というのも、二人は法廷で大暴れしたのだ。
強力な鎮静作用のある魔法を掛けられていたのにも関わらず、である。
二人は罪状認否の際も、ナオが悪い、ナオを死刑にしろと自分の罪を認めずナオに全てをなすりつけていた。
そして、あろうことか弁護役の役人を体当たりで突き飛ばし、裁判長に向かって魔法を放とうとしたのだ。
実際には兵に後ろ手で掴まれていて軽い頭突きになり、魔法も足につけられた魔力を強制的に逃がす魔導具によって無効化された。
しかし、法廷で暴れたことは隠しようもない事実である。
二人は裁判長から退廷を命じられ、被告がいない中で淡々と裁判が行われた。
法廷侮辱罪も加わり、二人の罪状は更に重くなった。
そして、この判決を勇者パーティーのメンバーが傍聴していた。
反逆罪もあるので、王家としての義務もある。
しかし、目の前で繰り広げられたのは醜い醜態だけだった。
勇者パーティーの誰もが呆れ、そして深い溜息をついていた。
いずれにせよ、この場にナオがいなくて本当に良かったと誰もが思っていた。
そして、三人は二度とナオに会うことはなかった。
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