第六十九話 あの三人の裁判の話

 捕まえた人が多いので、尋問をするには時間がかかるそうです。

 というのも、暗黒魔法の影響で操られていたので、浄化されてもぼーっとしているそうです。

 ということで、今日は王都周辺で確認されている怪しいところに向かいます。


「暗黒魔法は、淀みがあるところに強く作用する。例えば放置されていた屋敷や動物や魔物の襲撃があったところなどには、潜在的に淀みが存在しているんだよ」

「もしかして、前に浄化したワークス子爵領は、元々淀みがあるパターンなのかもしれませんね」

「あの森は、よく狩り場として使われていたらしい。となると、多くの命が失われたことにもなるから暗黒魔法の影響を強く受けたことにもなる。あれだけの暗黒杯があったから、王都内の淀みのありそうなところも順次ピックアップしているよ」


 馬車に乗りながらヘンリーさんと話をしたけど、まだまだやる事は沢山あります。

 因みに、地方でも既に幾つかの場所がピックアップされていて、そこはドラちゃんがもう少し力を回復したら向かうことになっています。

 ドラちゃん曰く、あと二週間もあれば力は取り戻せるという。

 オラクル公爵家で出てくる食事がとても美味しいから、力の回復も早いそうです。

 全回復した時の大きさは分かっているので、ドラちゃんに着ける鞍も制作しています。

 そんな話をしながら、現場の森に到着しました。


「ドラちゃん、大きくなると木の枝にぶつかるから気をつけてね」

「キュー」


 馬車から降りたドラちゃんは、スラちゃんとシアちゃんを背中に乗せていました。

 シアちゃんともすっかり仲良しになっていて、オラクル公爵家にいる時にはリーフちゃんも背中に乗せていました。

 セードルフちゃんが、ドラちゃんの背中に乗っているリーフちゃんを羨ましそうにしていました。

 魔力を溜めながら、森の中に入っていきます。


 サクッ、サクッ。


「うーん、ちょっと周囲にいる動物や魔物が多いです」

「ナオ君たちは、そのまま魔力を溜めておいてくれ。このくらいなら、私たちが相手をする」

「そうだよ。ナオ君には、指一本たりとも近づけさせないわ」


 ヘンリーさんとシンシアさんは、このくらい余裕だと笑顔で答えていました。

 もちろん、ナンシーさんとエミリーさんもです。

 近衛騎士も含めて、やっぱり勇者パーティってとっても強いんだね。

 実際に、沢山のオオカミやイノシシが現れても、あっという間に倒しちゃいました。

 こうして、みんなに守られながら目的地に到着しました。


「昨日の強烈な黒い霧を感じたからか、前よりも黒い霧の位置を把握しやすくなりました」

「あれだけの強烈な黒い霧を浄化したし、暗黒杯の存在もありそうね」


 僕たちは浄化魔法を準備していたけど、前よりもビビビッと感じるようになりました。

 良いことなのか悪いことなのか分からないけど、シンシアさん曰く僕の体に変化はないから大丈夫だとのことです。

 先ずは、目の前の黒い霧を浄化しちゃいましょう。

 僕は、杖を構えました。


 シュイン、シュイン、シュイーン、ぴかー!


「心なしか、一人と二匹の浄化魔法の威力が上がっているわ」

「間違いなく、昨日の強烈な黒い霧を浄化した影響なのだろう」


 シンシアさんとヘンリーさんが呟いているけど、昨日限界ギリギリまで浄化魔法を使ったから黒い霧を感じやすくなったのかな。

 目の前の黒い霧も、いつもよりも簡単に浄化しちゃいました。


「もうこれで大丈夫です。何だか、簡単に浄化出来ちゃいました」

「これは深く考えずに、とても良いことだと割り切ろう。よし、王城に戻るとするか」


 あっさりと終わっちゃったけど、無理は良くないということで森から街道に戻って馬車に乗って王城に戻ります。

 お昼までまだまだ時間があるけど、別件で話があるそうです。

 王城に着くと、僕たちは会議室に案内されました。


「座ってくれ。私たちにも関係あるが、どちらかというとナオ君がメインだ」

「僕が話のメインなんですか?」

「ああ、あの三人の件だからね」


 ヘンリーさんに話を振られて、思わずドキッとしちゃいました。

 あの三人といえば、もちろん元パーティメンバーの三人です。

 とっても悪いことをしちゃったのだけど、きっとその件ですね。


「実は、取り調べ中に兵を殴ったりして更に罪が重くなった。しかも一度じゃない。それを考慮した形で、数日後に裁判が行われる」

「それは、何というか取り調べをしていた人に申し訳ないです」

「元パーティメンバーだったナオの気持ちも分からなくはないがな。結論としては、名目上は未成年ってのもあり有期の強制労働刑だ。ただ、本人の反省具合によって刑期が伸びるものになるだろうし、重犯罪用の鉱山に送られるだろう」


 実質、無期懲役の判決になると言っていました。

 一番の問題が、本人たちは全く事件の反省をしておらず、再犯の恐れが極めて高いと判断されていることです。

 僕もあの三人が短期間で複数回犯罪を犯しているのを目の当たりにしているので、この処分は妥当だと思っていました。


「そして三人の家族の件もあるが、どうもナオ君のいた村を管轄する代官が、バンザス伯爵に全く問題ないと報告をしていることが分かった。三人の様子を聞いたバンザス伯爵は、この報告はおかしいと判断して調査を行なっている」

「あの、三人の家族は我が物顔で横柄なことをしていたんですけど……」

「私もあの三人の行動を見ているから、ナオ君の気持ちも良くわかる。今はスラム街で起きた邪神教と暗黒魔法の件を優先しないとならないが、落ち着いた頃にナオの村に行かないとならないと思っている」


 ヘンリーさんは、僕が爵位を貰ったのもあるので僕の両親にキチンと挨拶をした方が良いと言っていました。

 僕も両親に顔を見せて、安心させてあげたいとも思っています。

 こうして会議は終わり、まだ時間が余っていたのでお隣の軍の施設に行って怪我人の治療をして本日の任務を終了しました。

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