第六十六話 スラム街の教会へ
翌日は、予定通りスラム街の教会付近で報告された怪しい魔力反応を調べます。
昨日謁見の最中に捕まった三人の貴族家の捜索は軍が主導で行っていて、ヘンリーさんはどちらかというと昨日の裁判の後処理をしています。
刑罰は、速やかに執行されるとだけ聞いています。
この件は、軍にお任せですね。
僕とナンシーさんは、スラちゃんとドラちゃんと共に王城から来た馬車に乗り込みました。
「何だか、最近は色々あったので久々の冒険者活動の気がします」
「本当よね。ドタバタが続いたから、私も久々の活動よ」
「キュー」
馬車内でシンシアさんがドラちゃんを膝に乗せながら答えていたけど、シンシアさんは久々の冒険者活動ですね。
ヘンリーさんは、明日からなら動けると言っていました。
それにしても、ドラちゃんはシンシアさんに背中を撫でられてご機嫌ですね。
馬車はスラム街に入っていくけど、汚れとかも目立つようになり、何だか薄暗い気がします。
それに、道にいる人が僕たちの乗っている馬車をじっと見ていますね。
「何かを恵んでくれるのかと思っている人と、犯罪を犯して捕まらないかと思っている人に分かれるわ。今日は教会での奉仕作業だけど、いずれ時間を見て炊き出しと無料治療を行う予定よ」
シンシアさんが色々と教えてくれたけど、炊き出しをするにもしっかりと準備をしないと駄目だから直ぐにはできないそうです。
そして、今日奉仕作業する教会に到着しました。
大教会と比較してもかなり小さい教会だけど、それでもしっかりとした教会です。
僕たちは馬車から降りて、教会の中に入りました。
「じゃあ、ナオ君やっていいわよ」
「はい、いきまーす」
シュイン、ぴかー!
僕は、ナンシーさんの声を元に広範囲探索魔法を使います。
というのも、教会の外で魔法を使えば不審に思われるかもしれなかったからだ。
なので、念には念を入れて対応します。
「うーん、周囲には人の反応があるだけです。ただ、うまく探索魔法が効かない所があります」
「ナオ君レベルの探索魔法が効かないなんて、ちょっとおかしいわね。奉仕作業をしつつ、重点的に確認した方が良いわね」
なんというか、何かの力で隠されている場所があります。
そこだけ、ぽっかりと穴が空いているというか、そんな感じがします。
大体の方角は分かっているので、今は近衛騎士に調べてもらいます。
僕たちは、目の前のお仕事をキチンとやらないと。
ということで、最初にお掃除を始めます。
魔力を残す為に、ほうきとか雑巾を使っての掃除です。
「キュー、キュー」
「とても可愛らしいですわ。楽しそうに雑巾をかけていますね」
ドラちゃんも、壁にへばりついているスラちゃんと共に飛びながら窓拭きをしています。
二匹のほっこりする光景に、教会のシスターも思わずニンマリしています。
僕も長椅子を雑巾掛けして、綺麗にしていきます。
トントントン、トントントン。
「こんな感じで良いかしら?」
「すきま風は吹き込まないから大丈夫よ」
そして、エミリーさんはトンカチを持って教会の壁の穴を塞いでいます。
ナンシーさんも近くでトンカチを持って作業しているけど、ある意味凄いことをしているなあ。
シンシアさんは、シアちゃんと共に丁寧に女神様の像を拭いていました。
こうして、二時間ほどで教会内がピッカピカになりました。
でも、お手伝いはまだまだ続きます。
今度は、礼拝に訪れた人たちの補助をします。
順番に長椅子に誘導したり、シスターさんの補助をしたりします。
「クァー」
ドラちゃんはスラちゃんとシアちゃんと共に教会の隅に移動して、邪魔にならないようにしています。
お掃除を一生懸命頑張ったので、少しお休みタイムですね。
こうして、無事に礼拝のお手伝いも終わりました。
そして、町の人が教会から出て少しした時でした。
「皆さま、本日は色々手伝って頂きありがとうございます」
「いいえ、こちらこ……」
ドクン!
突然とんでもない魔力を感じ、僕たちは一斉に教会の外に出ました。
魔力の発生源を探すために周囲をキョロキョロとすると、教会の直ぐ側の建物から魔力を感じました。
あの建物はと思い探索魔法をかけると、その建物が探索魔法に引っかかりません。
「シンシアさん、あの二階建ての建物がおかしいです」
「私も魔力を感じたわ。みんな、行くわよ」
僕たちは、武装した上でその建物に向かって走っていきました。
でも、何だか嫌な感じがするんだよね。
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