第六十五話 騎士爵って?
そして、ある意味緊張する場面が訪れました。
「それでは、ナオは前に」
「はい」
ドキドキしながら、僕はランディさんの隣から絨毯の切れ目まで移動して膝をつきました。
頭は上げていて良いそうなので、そのまま陛下を見ています。
おや?
陛下が、一瞬僕にニヤッとしたような……
「王太后殿下を二度にわたり治療し、更にハイラーン伯爵捕縛時にはナイフを手にした奸臣からヘンリー殿下をお救いした。軍に限らず数多くの者を癒し、王都の状況改善に尽くしたのも大きな功績である」
近衛騎士が僕が何をしたかを説明すると、おおーって声が上がりました。
うう、何だか照れくさいです。
それに、治療に関しては僕だけでなくシンシアさんたちのお陰もあるんだよね。
そんな事を思っていたら、とんでもない事が発表された。
「以上の功績により、ナオに勲章を授与し、騎士爵を叙爵する」
パチパチと大きな拍手が送られたけど、僕は騎士爵って何ですかって状態です。
訳が分からない内に、勲章を胸に付けられて、豪華な短剣を頂きました。
えーっと、この後はどうすればいいんだろうか?
すると、陛下がおもむろに玉座から立ち上がりました。
「優秀な人材を見出すことができ、王国としても有益であった。本日の謁見は以上とする。皆も、自己の利益に走らずに民を思う政治を行うように」
「「「畏まりました」」」
こうして、後半は訳が分からないうちに謁見が終わりました。
王族が袖口へと向かい、後方の扉が開いて貴族が出始めました。
とりあえず短剣をアイテムボックスにしまい、僕はランディさんの側に行きました。
「ランディさん、その、騎士爵って何ですか?」
「一代限りで贈られる貴族の爵位だ。一番下にあたるよ」
わお、貴族の爵位なんですか?!
僕の頭の中が、色々と追いつきません。
「確かにシャーロット殿下を治療してヘンリー殿下を救ったくらいだと、与えられるのは勲章だけになる。しかし、結果的に国家反逆罪を防ぐ糸口を見つけた事にも繋がった。こっちの功績の方が大きい」
「さっき連行された三人も絡んでいた件ですね」
「だから、さっき奴らとは今後会うことはないと言ったんだよ。国家に敵対する四つの貴族を潰したんだ、これは大きな功績だよ」
廊下を歩きながらランディさんに説明を聞いたけど、結果的に僕とスラちゃんがシャーロットさんを治療したのが全ての始まりだったという。
僕とスラちゃんが全力でシャーロットさんを治療したのも、とっても評価が高いそうです。
何だか凄いことになっちゃったけど、王城にある応接室でもう少し詳しく話を聞くことになりました。
応接室にはランディさんを始めとする大物貴族と王族が揃っていて、シャーロットさんも部屋の中にいました。
「私は、ナオ君を爵位で縛るのはどうかと思ったのよ。それに、途中までは勲章だけの方向だったのよ。でも、まさかの事が発覚したのよ」
「それが、国家反逆罪の件ですね」
「ええ、そうよ。計画云々というのは過去にもあったけど、犯罪組織と手を組んでいるのはなかったわ」
シャーロットさんも、びっくり仰天の事件になったんだ。
とはいっても、僕はまだ八歳なのに爵位を貰っても良いのかな?
その疑問に、陛下が答えてくれた。
「爵位を与えるのに、年齢制限はない。それに、ナオは人として立派な心を持っている。だからこそ、謁見の際に堂々と反論したのだ」
「あれは立派だったわ。私もナオ君を褒めてあげたいわね」
王妃様も僕のことを褒めていたけど、あの時は涙をこぼすほど少し興奮していて何を言ったのか思い出せないんだよね。
でも、他の人も褒めているから大丈夫だよね。
そして、ここで元パーティメンバーの三人の話となった。
「国家反逆罪の捜査が優先されるから、三人の裁判はまた延期だ。聴取や留置所でも大人しくしていないという報告があったから、もう少し牢獄での生活を送らないとならない」
「うう、その……」
「あの三人の問題だ、ナオが謝ることはない。さっきも言ったが、三人は既に理性を失って欲で動いている。もう、何をしても駄目だと言うことだ」
陛下もなすすべなしと匙を投げているけど、そこまで酷いことになっているとは。
止められたけど、流石に申し訳なく思っています。
ともあれ、今日はこれで終わりとなり、お昼寝をしているアーサーちゃん、エドガーちゃん、ドラちゃんの見守りをしていたナンシーさんとスラちゃんと共に帰ります。
因みに、ナンシーさんは既に殆どの話を聞いていて、スラちゃんも何となく察していたそうです。
「それでは、ナオ君の騎士爵叙爵を祝って乾杯する。乾杯!」
「「「乾杯!」」」
その夜、僕の騎士爵叙爵のお祝いで、ちょっと豪華な料理が出てきました。
純粋にお祝いをしてくれたので、僕もとっても嬉しくなりました。
流石に、セードルフちゃんとドラちゃんは、おめでとうは言ってくれたけど詳細までは分からなかった。
それでも、一生懸命お祝いしてくれました。
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