第四十七話 勇者パーティの活動再開
今週から、勇者パーティの活動が再開します。
屋敷の庭で騎士服に着替えているナンシーさんと待っていたら、いつもの王家の馬車と近衛騎士の騎馬隊が入ってきました。
フルメンバーが揃うのも、ちょっと久しぶりですね。
ではでは、今日の目的地に向かいましょう。
「じゃあ、行ってくるね」
「いってらっしゃーい!」
セードルフちゃんとリーフちゃんに見送られながら、僕たちを乗せた馬車は出発しました。
冒険者ギルドで受付をして、今日は王都近郊の街道沿いにある森が捜索場所です。
「この辺を巡回している兵の証言により、急に攻撃的な動物や魔物が出てくる可能性が高いことが分かった」
「あっ、もしかして僕が軍の治療施設で治療した軍人さんとかがこの辺を巡回しているんですか?」
「もう何箇所かあるが、この辺りが一番被害が大きい。街道を行くものにも怪我人が出ているから、かなり厄介ではある」
ヘンリーさんが森を真剣な表情で見つめているけど、逆を言えばここをどうにかできれば怪我人は減るはずです。
これは気合を入れて頑張らないと。
でも、街道沿いの森の入口は特に感じるものがないから、もう少し奥に行くことになりました。
でも、その前にっと。
シュイン、ぴかー!
「うーん、普通の森に生息している動物や魔物の反応しかないですね。特別怪しいものは感じないです」
「そうか。では、進むとしよう」
「我々が、先行します」
近衛騎士が僕たちを挟み込むように護衛をしながら、森の中を進んで行きます。
森の中を進み始めて五分程した時、急に辺りの様子が変わってきました。
これは間違いありません。
「ワークス子爵領で感じた、謎の黒い霧っぽい何かです!」
「私も何かを感じるわ。全く同じものと判断して良さそうね。ナオ君、浄化魔法の準備をして頂戴」
僕だけでなく、シンシアさんも周囲から魔力的なプレッシャーを感じていました。
僕とスラちゃんは、直ぐに魔力を溜め始めます。
しかし、僕たちを目掛けて攻撃的になった動物が襲いかかってきました。
「「「グルアー!」」」
「オオカミの群れが凶暴化しているな。ナオ君の魔力が溜まるまで、我々で撃退する」
「「「了解!」」」
魔力自体は一分もあれば溜まるんだけど、なんと周囲に十頭を超えるオオカミが現れました。
僕とスラちゃん以外のメンバーが武器を手にして、オオカミを撃退していきます。
「ナオ君ばかりに良いところを取られないようにしないと、ね!」
「そうね。ここは、先輩としての意地を見せないと」
ザシュ、ザシュ!
「「「ギャン!」」」
ナンシーさんとエミリーさんだけでなく他の人もとっても張り切っているので、なんと僕が魔法を溜め終える前に全てのオオカミを倒しちゃいました。
倒したオオカミは、エミリーさんのスライムのシアちゃんが早速血抜きを行っています。
「皆さん、本当に凄いですね! じゃあ、僕とスラちゃんの浄化魔法の準備もできたので、一気に放ちます」
「ナオ君、やってくれ」
ヘンリーさんの許可も出たので、僕とスラちゃんは一気に魔力を開放します。
僕とスラちゃんを中心に、沢山の魔法陣が出現しました。
シュイーン、シュイン、シュイン、きらりーん!
ズゴゴゴゴ!
「いやはや、やっぱりナオ君の魔法は物凄いわね……」
「ナオの魔法は、私とは桁違いですわ……」
目の前の森が明るく輝き、浄化していく手応えもバッチリあります。
そして数分後、周囲の森の浄化が完了しました。
黒い霧みたいなもやもやも、綺麗さっぱりなくなりました。
しかし、ヘンリーさんの表情は険しいままでした。
「ワークス子爵領と違って、意図的に見つかり難くしているのか? いずれにせよ、継続調査が必要だな」
「怪しい箇所が近くにもあるから、そこをあたってみましょう。新たに分かることがあるかも知れないわ」
「そうだな。よし、第二のポイントに移動するぞ」
シンシアさんの進言もあり、僕たちは近くにあるというもう一つの動物や魔物が活動的になりやすい場所に移動した。
すると、こちらも森から少し中に入ったところに黒い霧みたいなもやもやが存在していた。
この状況を、ヘンリーさんは考えてしまいました。
「やはり、王都近くの確認ポイントは、パッと見では分からないようにしてあるのかもしれない。他方、地方では堂々と黒いもやの存在があるのか」
「そこは、もう少し情報が必要ね。しかし、私たちは気軽に地方に行けないから、悩ましいところだわ」
シンシアさん曰く、一日宿泊するくらいまでは許可されるそうですが、二泊になると公務との兼ね合いもあるので難しいそうです。
それはナンシーさんとエミリーさんも同じだそうで、相手方がいるので僕やスラちゃんだけで動く訳にもいかないそうです。
うーん、中々難しい問題ですね。
「取り敢えず、今は目の前にあるポイントを潰していくしかない。地道な作業になる上に、ナオ君とスラちゃんの力がどうしても必要だ。今は無理せずに、着実にこなしていこう」
「「「「はい!」」」」
こうして僕たちは、まずは王都周辺を重点的に対応することになりました。
何とか、遠くに直ぐに移動できる良い移動方法とかあれば良いんだけどなあ。
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