第四十六話 久々の穏やかな日
今日は安息日で特に予定はなかったので、朝からセードルフちゃんと遊んでいます。
セードルフちゃんは今日も元気いっぱいで、庭を走り回っています。
「にーに、こっちだよー!」
「よーし、捕まえるよ」
「きゃー!」
セードルフちゃんは、本当に元気いっぱいですね。
満面の笑みで、僕との追いかけっこを楽しんでいます。
中々足が速くて、僕も時々本気で走っています。
因みに、スラちゃんとリーフちゃんは、僕たちを見守っているレガリアさんとナンシーさんの側にいて、ふりふりと触手を動かしながらスライム談義をしています。
リーフちゃんが魔法を使えるようになるのはまだまだ先なので、気長に頑張って行きましょう。
「セードルフちゃん、そろそろ追いかけっこは終わりよ。屋敷の中に入って、絵本を読みましょうね」
「はーい」
体を動かすことも大切だけど、勉強もとても大切です。
レガリアさんが声をかけて、庭から勉強部屋代わりの本が沢山置いてある書斎に移動します。
ソファーが置いてあるので、セードルフちゃんはレガリアさんに抱っこされながら絵本を読んでもらいます。
リーフちゃんもセードルフちゃんの頭の上に乗って、一緒に絵本を見ています。
その間、僕とナンシーさんはそれぞれの本を読んでいきます。
僕はというと、アイテムボックスからヘンリーさんに貰った本を取り出しました。
地理や歴史に加えて簡単な決まり事とかも載っているので、知識が不足している僕にピッタリな本です。
ヘンリーさんは、この本を読み終えたら新しい本をくれるそうです。
何だか、久々にゆっくりと時間が過ぎて行きますね。
ここでも、スラちゃんがリーフちゃんに色々な事を教えていました。
しかし、そんなゆっくりとした時間は僅か三十分で打ち破られてしまいました。
コンコン。
「みんな、お友達がきたわよ」
「こんにちわー!」
「あー!」
何とイザベルさんが連れてきたのは、王城にいるはずのアーサーちゃんとエドガーちゃんでした。
マリアさんも一緒にいたけど、一体どうしちゃったのかな?
すると、マリアさんが理由を教えてくれました。
「ふふ、実は今日は元々オラクル公爵家に遊びに行く予定だったのよ。息子はセードルフちゃんとも仲良くて、こうしてたまにお互いが行き来して遊んでいるのよ」
何と、そういう理由があったとは。
しかも、レガリアさんも僕に内緒にしていたみたいです。
これには、僕もビックリ仰天です。
すると、アーサーちゃんとエドガーちゃんは、絵本を持ってきて僕の膝の上にちょこんと乗ってきました。
「ナオにーに、絵本読んで!」
「あう!」
「ふふ、分かりましたよ」
こうして昼食までの間、僕はみんなに絵本を読んであげていました。
セードルフちゃんも混じって、数冊の絵本を読んだところでお待ちかねの昼食の時間です。
「おー、食べてる食べてる!」
「食べてるよ!」
「あう!」
小さな三人の好奇心旺盛な視線の先には、仲良く昼食を食べるスラちゃんとリーフちゃんの姿がありました。
リーフちゃんがひとり立ちするまでもう少しかかるので、その間はスラちゃんがサポートするそうです。
もちろん、セードルフちゃんもリーフちゃんをめいいっぱい可愛がっているので、一人と一匹の関係はとても良好です。
「さあ、みんなも沢山食べましょうね」
「「はーい」」
「あい!」
そして、ナンシーさんに促されて三人もスラちゃんとリーフちゃんに負けないように、もぐもぐと一生懸命に昼食を食べています。
何だか、とっても微笑ましい光景ですね。
「ナオ君も、もっと食べないと駄目ですよ」
「「だめー!」」
「あうー」
あらら、みんなを見ていたら今度は僕がレガリアさんから注意を受けちゃいました。
僕も、みんなに負けないようにいっぱい食べないとね。
こうしてみんなで昼食を食べたら、何故か三人は僕の部屋に来たいと言い出しました。
そして、三人揃ってベッドにダイブしました。
スラちゃんとリーフちゃんも、僕の枕元にダイブしていますね。
そして、一分後……
「「「すー、すー」」」
あっという間に、三人はお昼寝タイムに突入しました。
因みに、スラちゃんは起きているけどリーフちゃんは寝ちゃったみたいですね。
「あらら、みんなお昼寝しちゃったわね」
「ふふ、大好きなお兄ちゃんの匂いに包まれて安心しちゃったのかな?」
これには、イザベルさんとマリアさんもビックリです。
でも、三人とも良い寝顔ですね。
「せっかくだから、ナオ君もゆっくりしましょうね」
「僅か一週間でナオ君の立場はガラリと変わっちゃったから、きっとナオ君も疲れているわ」
確かに、幼馴染パーティから追放されてヘンリーさんに助けて貰って、勇者パーティの一員として行動したり、元メンバーの三人がトラブルを起こして対峙したり。
全部、一週間の間に起きたことなんだよね。
僕を取り巻く状況が目まぐるしく変わったけど、総じて良い人に出会えたね。
スラちゃんは、ずっと変わらずに一緒にいてくれたけど。
「ふわぁ……」
「あらら、ナオ君も眠くなっちゃったかしら?」
「みんなと一緒に、ゆっくりと休んだ方が良いわよ」
イザベルさんとマリアさんの進言もあり、僕は三人と一匹が仲良く寝ているベッドに潜り込みました。
ベッドがとっても温かいのか、僕はあっという間に夢の世界に行っちゃいました。
そして、スラちゃんが魔法を使って僕に布団をかけてくれました。
「こう見ると、やっぱりスラちゃんはナオ君のお兄ちゃんなのね」
「本当に面倒見がとても良いわね。息子二人も、ナオ君とスラちゃんを慕っているわ」
楽しそうに話をする二人に、スラちゃんは触手をふりふりとしていました。
そして、スラちゃんも僕の枕元に潜り込んでスヤスヤと寝始めました。
僕が冒険者になってから、初めてのんびりした日を過ごせました。
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