第四十五話 セードルフちゃん頑張る!
その後は、皆で護衛を交代しながら薬草を採っていきます。
スラちゃんだけでなくシアちゃんも張り切っているので、護衛を二周した頃にはもう十分な薬草が溜まりました。
シアちゃんが頑張るのを見て、エミリーさんはその度にシアちゃんを褒めていました。
まだお昼前だけど、僕たちは馬車に乗って冒険者ギルドに戻ることにしました。
「シアちゃんは体が小さいし魔法の使い方も分からないから、私が色々と教えてあげるね」
エミリーさんの手の上に乗っている小さなシアちゃんは、了解と触手をふりふりとしていました。
そして、シアちゃんは僕の腕の中に飛んできて、スラちゃんとスライム談義をしています。
スラちゃんが触手をふりふりとしながら教えていて、シアちゃんは分かるとふるふるとふるえています。
二匹のスライムが語り合っていて、とっても癒される光景ですね。
因みに、エミリーさんはスラちゃんがシアちゃんに色々と教えるのは全然問題ないそうです。
そして、冒険者ギルドに着いて大量の薬草を納品すると、職員が納得した表情を見せました。
「やっぱり、ナオがやると質の良い薬草が採れるな。スライムも頑張っているって聞いたし、あの三馬鹿とはまるで違うな」
「そりゃそうよ、ナオとスラちゃんはとんでもない薬草を見つけたわよ。雑草を納品した連中とは違うわ。でも、シアちゃんも頑張って薬草を見つけていたわよ」
「殿下の頭の上に乗っているマジックスライムのことか。ははは、スライムが二匹もいりゃあそりゃすげーだろうな」
職員は、エミリーさんにも軽口を叩くくらい上機嫌です。
エミリーさんも冒険者活動時はいつものことなので、近衛騎士も特に気にしていません。
そして、珍しい薬草や毒消し草も混じっていたので、買取金額は物凄い事になりました。
僕がスラちゃんの分の報酬を分けてあげたら、エミリーさんもシアちゃんに報酬を分けてあげていました。
こうして薬草採取は無事に終わったのですが、屋敷に送ってもらったらちょっとした出来事が待っていました。
とととと。
「おかえりー!」
「わっ、セードルフちゃん、ただいま」
「ただいま、セードルフちゃん」
「はやかったねー」
屋敷に着くと、庭でイザベルさんとレガリアさんと遊んでいたセードルフちゃんが、僕とナンシーさんに抱きついてきました。
僕たちが早く帰ってきたので、とっても嬉しいみたいですね。
すると、顔をあげたセードルフちゃんが、僕の横にいるエミリーさんの肩の上に乗っているシアちゃんに気が付きました。
「あー! ねーねにも、しろいチュライムがいるよー!」
「シアちゃんって言うんだよ。今日、仲間になったのよ」
シアちゃんも触手をふりふりして挨拶したんだけど、何だかセードルフちゃんの様子がおかしいです。
すると、庭の落ち葉の溜まっている辺りにとととって走って行って、ごそごそと何かを探し始めました。
「ぼくも、チュライムさがす!」
ごそごそごそ。
「あらあら、対抗心を燃やしちゃったのね」
「小さくても、男の子よね。ガイルも、小さい頃は色々なことをしていたわ」
セードルフちゃんのところに慌てて侍従が向かったけど、イザベルさんとレガリアさんはにこやかにセードルフちゃんを見ていました。
そういえば、僕も小さい頃は庭で土いじりをしたりしていたもんなあ。
しょうがないなあって感じで、スラちゃんもセードルフちゃんのところに行ってスライム探しを手伝ってあげています。
こうなると、小さい男の子は気の済むまでやらないと落ち着かないもんね。
エミリーさんも、少しだけと言ってシアちゃんと共にセードルフちゃんを見守っています。
そして、スライムを探し始めて十分後でした。
「みつけたー!」
鼻に土をつけて服に葉っぱをつけながらも、セードルフちゃんはとても良い笑顔で右手を高々とあげていました。
その右手には、透明な緑色の小さなスライムがちょこんと乗っていました。
これには、見守っていた僕たちみんなビックリです。
直ぐに侍従がセードルフちゃんの膝とかについていた土汚れを落としているけど、これは洗濯に直行ですね。
意気揚々とスライムを抱えたセードルフちゃんがイザベルさんのところにやってきたけど、イザベルさんは注意するのも忘れません。
「セードルフ、キチンと面倒をみるのよ。途中で放り出したら駄目よ」
「がんばるー! リーフちゃんなの!」
まあ、セードルフちゃんにスライムの飼い方は分からないだろうから、僕とスラちゃんで色々と教えてあげないとね。
因みにこのスライムは緑色だけど至って普通のスライムで、森ではなく町中でも落ち葉や木の生い茂っているところを探せばたまに見つかるそうです。
そして、案の定セードルフちゃんは直ぐに着替えタイムとなり、その間にスラちゃんがリーフちゃんに色々なことを教えてあげていました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます