第四十八話 教会の治療施設での治療は早めに終わりました

 こうして、数日間は王都近郊の森や事前に調整がついている領地にある森の黒い霧みたいなもやもやを浄化していき、またヘンリーさんが王城で公務を行う日がやってきました。

 今日はシンシアさんとエミリーさんは同席しなくても良いそうで、元々今週行う予定だった治療の依頼をこなすことにしました。

 冒険者ギルドで手続きをした僕たちは、馬車に乗って大教会へ向かいました。


「シンシア、忙しいところ悪いな」

「いえ、これは私たちがすべきことですので、お父様もお気になさらずに。これだけの治癒師がいるパーティは、そうはないですわ」

「そうだのう。周辺国を探しても、これだけのパーティはないのう」


 今日は先週に引き続いて、大教会付属の治療施設に入院している人の治療を行います。

 先週のうちに大部屋に入院していた人は全て退院したけど、既に六つあるうちの四つが満床だそうです。

 王都は人口も多いので、常に入院する人が待っているそうです。

 シンシアさんのお父さんは申し訳なさそうにしているけど、僕たちは治療も頑張ってやるので問題ありません。

 そして、今日は張り切っているのがもう一匹いました。


「シアちゃん、今日は頑張ろうね」


 エミリーさんのスライムのシアちゃんが、実質的に初めて治療を行います。

 森での活動の際に簡単な治療をしたことはあるけど、大人数は初めてですね。

 シアちゃんはエミリーさんの肩の上で、ふるふるとやる気満々でぷにぷにしていました。

 スラちゃんはナンシーさんが抱えて、全員の準備完了です。

 では、早速治療施設の大部屋に行って治療を始めます。


「あの、今日も全員治療しても良いんでしょうか?」

「ええ、宜しくお願いいたしますわ。先日の奉仕活動でも、皆さまのお陰で沢山の人を治療できました。本当に感謝しております」


 治療施設担当のシスターさんは先日も会っていて、僕も治療しながらお話をします。

 僕たちの治療は町の人の評判も良いそうで、来月の奉仕活動でも是非とお願いされちゃいました。

 褒められるって今まで中々なかったから、とっても嬉しいですね。


 シュイン、ぴかー!


「ふふ、シアちゃん良い感じよ」

「すげーな、治療できるスライムが二匹もいるのか!」

「スラちゃんは凄いスライムですけど、私のシアちゃんも中々ですわよ」


 シアちゃんも順調に治療していき、エミリーさんもとっても良い笑顔です。

 もちろんエミリーさんも治療をしていくけど、回復魔法の使い手が増えたので効率良く治療ができます。

 僕とナンシーさんが抱いているスラちゃんがどんどんと重傷者を治療していくので、他の人で中程度や軽傷者を治療していきます。

 今日は満床じゃないのもあって、午前中のうちに全員の治療を終えることができました。

 みんな元気になるのって、気持ちいいですね。


「これは凄いな。まさか、午前中のうちに全員の治療を終えるとは」

「手際良く治療できましたから。お父様、また治療に参りますわ」

「ははは、やる気満々だな。次は半月後で良いぞ」


 帰りがけにシンシアさんのお父さんとも話をしたけど、奉仕活動もあったので入院が必要な人が減ったそうです。

 患者数が少ないので、当分は教会の人たちでも十分に対応できるそうです。

 僕たちは大教会から冒険者ギルドに戻って、完了手続きを進めます。


「うーん、まだまだ魔力がいっぱい残っているんですよね……」

「それなら、こちらの依頼などはどうでしょうか?」

「「「??」」」


 受付でぼそっと愚痴をこぼしたら、受付のお姉さんがとある依頼書を僕たちに差し出しました。

 何だろうと僕たちも中身を見てみたら、冒険者ギルド内での無料治療の対応でした。


「報酬は少ないのですが、きちんとお支払いいたします。森で活動する冒険者を中心に、怪我人が相次いでおりまして……」

「なるほど、分かりました。午後からでも宜しいですか?」

「ええ、問題ございません」


 もしかしたら、例の黒い霧みたいなもやもやの影響で活動的になった動物や魔物の影響なのかもしれない。

 シンシアさんのオッケーも出たので、午後は冒険者ギルド内で治療をする事にしました。

 シンシアさんも、黒い霧みたいなもやもやの件は口に出さずに言葉を選んで対応していました。

 昼食はオラクル公爵家で食べることになり、一旦冒険者ギルドを離れます。

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