第四十二話 神様への祈りそして奉仕活動の終了

 そして、ある程度治療が進んだところで元気の良い声が僕に抱きついてきました。


「ナオにーに!」

「あー!」

「わっと。アーサーちゃん、エドガーちゃん」


 どうも、教会内でのマリアさんとの奉仕活動が終わったみたいで、二人ともとっても良い笑顔ですね。

 二人と一緒にいたスラちゃんも、僕に抱きついています。

 でも、直ぐに二人は僕の様子に気がついたみたいです。


「ナオにーに、元気ないよ」

「あう」

「えっ、あっ……」


 二人が僕の顔を覗き込んでいるけど、まだ心が落ち着いていないのかな?

 スラちゃんは、僕に抱きつつ触手で頭を撫で撫でしていました。

 この場面を助けてくれたのは、二人の母親のマリアさんでした。


「ほらほら、二人ともナオ君から離れなさいね。ナオ君は色々あって疲れているのよ」

「そーなんだ!」

「あい!」


 マリアさんは僕に何があったのかを知っていて、エドガーちゃんを抱っこしながら僕にこくりと頷きました。

 そして、二人を教会内に連れて行きました。

 スラちゃんも何があったかを知っていて、二人から離れて治療に入りました。

 すると、エミリーさんが僕に話しかけてきました。


「ナオ、少し休みなさい。休憩を取らずに、ぶっ続けで治療をしているわ」

「えっ、でも……」

「スラちゃんもいるから、ここは大丈夫よ。ちびっ子のところに行ってきなさい」


 スラちゃんも、任せろと触手をふりふりとしています。

 集中していた方が気が紛れるかなと思っていたんだけど、エミリーさんは真剣な表情で僕に促してくれました。

 シンシアさんとナンシーさんも大丈夫だと言ってくれたので、僕は教会内に入りました。

 すると、教皇猊下と話をしていた王妃様が、僕の存在に気づきました。


「あら、ナオ君どうしたの?」

「ずっと治療をしていたので、少し休んだ方が良いと言われまして……」

「そうね、少し休んだ方が良いわ。長椅子に座って、教会内を見るのも良いわよ」

「うむ、そうだのう。ナオ君は十分に頑張ったから、ゆっくりするのじゃ」


 王妃様だけでなく教皇猊下からも休憩するように言われたので、僕は祭壇近くの長椅子に座って周圍を眺めることにしました。

 目の前に神様の木像が置かれていて、ステンドグラスからの光が漏れていてとても幻想的な光景です。

 ぼーっと神様の木像を見ながらゆっくり休んでいたら、教皇猊下が僕に話しかけてきました。


「ナオ君、せっかくだから祈りを捧げていくがよい。ずっと外で治療をしていたのだから、礼拝には参加していないだろう」


 ということで、さっそく教皇猊下に促されて祭壇の前に膝をついて祈りを捧げました。

 これからは、順調な冒険者生活を送りたいなあ。

 祈り終わって目を開けたところで、沢山の人から声をかけられました。


「あら、とっても綺麗な光景ね」

「「おー!」」

「中々神々しいわね」


 マリアさんとアーサーちゃんエドちゃんちゃんに、治療をしていたエミリーさんたちも教会内に入ってきました。

 えーっと、何が起きているんだろうか?

 僕は、思いっきりはてな状態です。

 その答えは、王妃様が教えてくれました。


「祈りを捧げるナオ君にステンドグラスからの光が差し込んでいて、とても絵になる光景でしたわよ」

「さっきは神様の木像に光が落ちていたけど、たまたま僕のところに落ちたんですね」

「だとしても、陽の光がナオ君の白銀の髪と合わさって、とても素敵な光景だったわ」


 タイミングが良かったにせよ、そんな感じになっていたんですね。

 そして、炊き出しと無料治療も終わったみたいで、シスターと聖職者も全員引き上げてきました。


「それでは、私たちはこれで失礼いたします。教皇猊下、また宜しくお願いいたします」

「今日は、トラブルも含めて良い教訓となった。来月も、お頼み申す」


 奉仕活動は、毎月行っているんですね。

 今日は無料治療が中途半端に終わっちゃったから、来月はもっと頑張ろう。

 僕たちは教皇猊下に見送られながら教会から出て、馬車に乗り込みました。

 因みに、窓ガラスが割られた王家の馬車は、いつの間にか別の馬車に交換されていました。


「このまま王城に行って、昼食を食べるわよ」

「もうそんな時間なんですね」

「ナオ君は、ずっと集中していたもんね。午後は何も無いから、ゆっくり休んでね」


 ナンシーさんからまた休んでって言われちゃったけど、今日は休んでばっかりな気もします。

 そして、馬車はあっという間に王城に到着しました。

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