第四十一話 申し訳ない気持ちと許すということ
喧騒が少し収まり、僕たちはそれぞれ武器をしまった。
そして、僕は窓ガラスが割れた馬車と大教会にトボトボと歩きながら近づいた。
ああ、馬車も教会の部屋も綺麗に一枚の窓ガラスが粉々に割れていた。
幸いにして両方とも無人だったので、怪我人はいなかった。
でも、僕はそれどころではなかった。
改めて目の前で起きている現実を知って、僕はずーんと落ち込んでしまった。
かなり落ち込んでしまった僕に、ナンシーさんとエミリーさんが慌てて話しかけてきた。
「ナオ君、大丈夫よ。これは、ナオ君がしたことじゃないのよ」
「そうよ、あの馬鹿がやったことなのよ」
「でも、でも……」
僕だって、あの二人が窓ガラスを割ったとくらい理解しています。
でも、中々感情が追いつかずにぐるぐると頭の中でまわっていました。
ナンシーさんとエミリーさんが僕の頭を撫でてくれても、感情がぐるぐるとまわるのは収まりませんでした。
ガチャ。
「ふう、どうやら落ち着いたみたいね。あら、ナオ君どうしたの?」
その時、固く閉ざされていた大教会の扉が開き、王妃様が姿を現しました。
その瞬間、僕の中の感情が溢れました。
「王妃様、ごめんなさい! 馬車と教会の窓ガラスが、割られてしまって……」
「ナオ君、大丈夫よ。泣かないで」
「うっぐ、うう……」
僕は涙が止まらなくなってしまい、腕で何度も涙を拭きました。
そんな僕のことを、王妃様は優しく抱きしめてくれました。
その間に、ナンシーさんとエミリーさんが何があったかを詳細に説明しました。
「そう、そんなことがあったのね。ナオ君は優しいから、元メンバーのやったことが申し訳なく感じているのね」
「はい、その通りです……」
「あのメンバーにいたことで、ナオ君に少なからず悪い影響が出ているわ。ナオ君の優しさは美徳だけど、何もかも心配するのは自分の心を縛ることにもなるわ」
数分後、泣き止んだ僕に王妃様が優しくそれでもきっぱりと話しました。
何だかんだいって、あの三人が僕の心を縛っていたんだ。
でも、申し訳ない気持ちは直ぐに消えそうにないです。
すると、今度はとても立派な聖職者の服を着た、白髪のあごひげを生やしたお爺さんが大教会の中からやってきた。
そして、僕にとあることを話しました。
「ほほほ、君がナオ君だな。噂に違わず心の優しい少年だ。ナオ君に一つ教えよう。形あるものはいつか壊れる運命だ、どんなに立派なものでも壊れる時がある。今回割れた窓ガラスも、ここで壊れる運命だったのだよ」
「で、でも……」
「そして、ナオ君はこんなにも真剣に謝っているのだ。三人が犯した罪は消えることはないが、神の名においてナオ君を許そう」
その言葉を聞いた瞬間、僕の心が少し軽くなりました。
謝る気持ちも大切だし、許すという気持ちも大切です。
僕は目を閉じて少し気持ちを整理してから、目の前にいる人にお礼を言いました。
「ありがとうございました、教皇猊下」
「おお、正体がバレてしまったか。ナオ君は若い、大いに悩めよ。その先に道は開くだろう」
教皇猊下は、ホホホと笑いながらまた建物の中に入りました。
とっても良い話を聞けて、だいぶ気持ちが楽になりました。
そんな僕の表情を、エミリーさんがずずずっと覗き込みました。
「ふふ、だいぶ良い顔に戻ったわね」
「まだ完全じゃないですけど、だいぶ気持ちが楽になりました。このあとは、頑張って治療をします」
「そうね、他のことに集中することで気持ちも和らぐわ。ただ、無理をしないようにね」
エミリーさんは少しだけ僕をギュッと抱きしめて、ニコリとしました。
そして、僕の手を引いて無料治療の方に歩いていきました。
ナンシーさんも、やれやれって感じで後をついてきます。
既に何人か、無料治療のところに並んでいた。
僕は用意された椅子に座って、さっそく治療を始めました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます