第三十三話 三人の冒険者ライセンス停止

 翌朝、三人は期待に胸を膨らませながら冒険者ギルドに向かった。

 早朝だったが、冒険者ギルドの中は依頼を受ける冒険者で溢れていた。

 しかし、三人はそんな冒険者を見て蔑んでいた。

 自分は、ギルドマスターから直々に依頼を言い渡される選ばれた存在だと思っていた。

 そして、自分たちの受付の番となった。

 茶髪の短髪が、意気揚々と受付嬢に用件を言った。


「おい、ギルドマスターが俺たちに用があるとい……」

「承知しております。三名の冒険者カードをお預かりします」

「あっ、ああ……」


 受付嬢は、ニコリとしながら茶髪の短髪が余計な事を言わないように話を強引に遮った。

 というのも、三人が来たら余計な事をせずに冒険者カードを預かって個室に行くようにと、ギルドマスターから受付担当全員に指示が出ていたのだ。

 三人は受付嬢の笑顔の圧力に気圧されて、少しびくびくしながら冒険者カードを差し出した。

 受付嬢は冒険者カードを受け取ると、直ぐ側の個室を指さした。


「あちらの個室にてギルドマスターがお待ちです。早急に来て欲しいとのことです」

「「「あっ、わ、分かった」」」


 再びの受付嬢の笑顔の圧力に、三人は完全に飲まれていた。

 そして、素直に個室に向かった。

 受付嬢に気圧されている時点で、自分たちの実力は大したことないと気付くべきだった。

 そんな怪訝そうな三人の後ろ姿を見て、受付に並んでいる冒険者と他の受付嬢はクスッとしていた。

 どんなことを言われるかは一切周知されてないが、冒険者と他の受付嬢たちは三人がギルドマスターに何を言われるのか予想がついていた。

 そんな中、三人の対応をした受付嬢は一旦受付を閉めて忙しく作業をしていた。

 そして三人は、受付嬢に指示された個室のドアを開けた。


 ガチャ。


「おい、お前ら! ノックもしないで部屋に入るとは何事だ!」

「「「す、すみません!」」」


 バタン。


 三人はいきなりドアを開けたので、中にいたギルドマスターに物凄い剣幕で怒られた。

 先日、王城で四歳児がドアをノックしたのに、三人はそのことすら頭になかった。

 ビビりながらドアをノックして再び個室に入った三人を見た冒険者と他の受付嬢は、肩を震わせながら爆笑するのを必死に堪えていた。

 そして、三人の対応をした受付嬢は、作業を終えて個室に向かった。


「「「し、失礼します……」」」

「お前ら、入室時の最低限のマナーすら知らねえのかよ。まあ、お前らに言ったところで無駄だな。取りあえず座れ」


 厳しい表情をしたギルドマスターに睨まれて、三人はビクビクおどおどしながらギルドマスターの対面にあるソファーに座った。

 個室内は、ギルドマスターただ一人だけだった。

 そして、ソファーに座った三人に、ギルドマスターは人を殺せそうな鋭い視線と威圧を向けていた。

 残念ながら三人は自分の周囲をキョロキョロと見ていて、ギルドマスターの視線や威圧に全く気づいていなかった。


 コンコン。


「失礼します。三人の処理が終わりました」

「そうか、ご苦労」


 ドア越しに、さっきの受付嬢の声が聞こえてきた。

 ギルドマスターは三人に向けた視線を外すことなく、受付嬢に返事をした。

 三人は、処理をしたと聞いてなんのことだか分からず少し混乱していた。

 そんな中、ギルドマスターが威嚇するような低い声で話し始めた。


「おい、お前ら。今日、何で俺がお前らをここに呼んだか分かっているか?」

「「「え、え、いえ……」」」

「俺からの指名依頼だと勘違いして、お前らがのぼせ上がっていたという報告も聞いている。当然、俺からの指名依頼なんてねーぞ!」

「「「ひいっ」」」


 三人が妄想を描いていたギルドマスターからの指名依頼は、木っ端微塵に砕かれた。

 では、何でこの場に呼ばれたのか、三人は全く理解していなかった。

 ギルドマスターは、三人が本当に馬鹿なんだと、改めて思い知らされた。

 そして、ギルドマスターは怒りを抑えながら三人に結論を告げた。


「王都冒険者ギルドマスターガンドフより、ガッツ、二ゴール、ランドに通告する。冒険者ギルドの規定違反により、本日付けで三人の冒険者ライセンスを停止し、その一切の権限を剥奪する。期間は十年間だ」

「「「はっ? えっ?」」」


 三人は、ギルドマスターに言われた内容が全く理解できなかった。

 アホ面を向けながら、ポカーンとしていた。

 そんな三人の反応を無視して、ギルドマスターは話を続けた。


「違反案件が多すぎたので、お前らを一発アウトにしても良かった。まあ、殆ど同じ意味合いだがな」

「いっ、一発アウトって……」

「ああ? お前らは、そんなのも理解できねえのか? 冒険者ライセンス剥奪だよ、剥奪だ!」


 茶髪のツンツン頭が馬鹿な質問をしたが、それによってようやく三人は自分たちの置かれた現状を理解した。

 何故自分たちが冒険者ライセンスを停止されるのか、そこまでは三人は理解できなかった。

 しかし、ギルドマスターはこれ以上三人と話をする気はなかった。


「本来なら弁明の機会も与えられるが、お前らの場合は現行犯だ。処分を検討する委員会でも、全会一致で処分をすると結論づけた。俺からの話はこれで終わりだ」

「「「ちょっ……」」」


 三人の話を聞くつもりは全く無いのか、ギルドマスターは三人がなにかを言いかけても無視して立ち上がった。

 三人は、無意識にギルドマスターを追いかけるように席を立って個室から出た。

 個室から出た三人は、ギルドマスターではなく少し離れた受付で信じられないものが本当にたまたま視界に入った。

 沸点の低い三人は、その瞬間に感情が爆発していた。

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