第三十二話 更に追い詰められた三人
その頃、ナオを追放した三人は更に追い詰められていた。
今日も金がなくて昨日よりも更に安い宿に泊まっていたのだが、前金を払ったことで遂に手持ちの金が底をついたのだ。
どうやって金を使うかという計画性が皆無なので、金があればあるだけ使っていた。
「おい、本格的にヤバいぞ。明日以降どうするんだよ!」
「知らねーよ。どうやったら金が手に入るんだよ」
「今日の依頼も失敗したし、食べ物もこれで終わりだぞ」
緑髪の魔法使いが愚痴をこぼしているが、この三人は三日連続で依頼に失敗していた。
しかも、昨日と同じ討伐依頼を行い、今日も肝心の獲物を見つけることすらできなかった。
この依頼は、現状では三人が受領できる依頼の中でも最も報酬が高かった。
王都近郊の森の中をうろうろとしていたのだが、元々対象の獲物は王都近郊の森では数が少なく、ナオの探索魔法を使わなければ人力で探すことはまず無理だった。
更にナオとスラちゃんなら難なく対象の魔物を倒せるが、仮に遭遇したとしても三人の実力では倒すことは不可能だった。
三人はそんな情報も知らず、疲労と苦労のみ残っていた。
もちろん、討伐失敗で報酬を受け取ることもできません。
確実にこなせる荷運びなどの依頼を受ければこんなことにはならなかったのだが、これも三人のおごりが原因だった。
というのも、やはり自分たちは簡単な依頼は受けるレベルではないと勝手に勘違いしていた。
三人はナオどころかスラちゃんよりも遥かに実力が劣っているのだが、自分の実力を正しく把握する事すらしなかった。
お互い愚痴をこぼすだけで、解決方法を話し合わないのが一例だろう。
更に、もう一つの体験が大金を欲している理由だった。
「それにしても、あいつを追い出した日に泊まった宿は最高だったな」
「食事も寝具も一流だったな。また泊まってみたいぞ。まさに、俺たちのための宿だった」
「また泊まるためにも、何とかして大金を得ないと」
三人は身分に合わない高級宿に一晩泊まり、現時点でできる最高の体験をしていた。
自分たちは成功者だと、誤った認識を持ってしまった。
なので、一回で大金が入る依頼しか目に入らなかった。
もちろん、そんな依頼など三人には実力不足でこなせるはずもない。
冒険者ギルド側も、制限依頼は昨日のように実力不足だと受付自体を断っている。
一か八かの確率で依頼を許可するほど、冒険者ギルドも甘くはない。
しかし、三人には大金が手に入る打算があった。
「まあ、明日になれば俺たちは大金持ちだ。何せ、ギルドマスターが俺たちにって話だもんな」
「どんな依頼なんだろうか。今からワクワクするぜ」
「その後は、一流冒険者に相応しい最高の体験をしないとな」
「「「あっはっは!」」」
三人は酒を飲みながら、ありもしない空想に思いを馳せていた。
既にバラ色の生活が待っていると、勝手に勘違いをしていた。
都合の良いことしか考えることができず、ナオもスラちゃんもいないので止めるものもいなかった。
しかしながら、ギルドマスターはそんな馬鹿な理由で三人を呼ぶはずがないことに気が付かなかった。
そして翌朝、厳しい現実を知ることになる。
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