第四話 勇者パーティーと行動することに

「取り敢えず、俺というかギルドからはここまでだな。ギルド内で騒ぐのとパーティメンバーのお金を要求する二つの規定違反をしたから、奴らは俺たちの監視対象になる」


 ギルドマスターからのお話は終わったけど、何だか不敵な笑みを浮かべているのがとっても怖いよ。

 ある意味、この時を待っていたって感じですね。

 そして、今度はヘンリーさんが僕に話しかけてきました。


「さっき私がナオ君のとあるところに注目していたと言ったけど、それは髪の色なんだよ」

「えっ、僕の髪色ですか? 僕は、シルバーみたいな色をしていますけど」

「そう、そこなんだよ。実は、魔力を持っている人は一番強い魔力に合わせた髪色になるんだよ。そして、私は今までこんなに綺麗なプラチナブロンドの髪を見たことがなかったんだ」


 魔力属性によって髪色が変わってくるなんて、僕は初めて知ったよ。

 もちろん、あの三人は何も知らなかったよ。

 スラちゃんもとっても驚いているけど、じゃあもしかして……


「ヘンリーさんは雷か光魔法、シンシアさんは水魔法で、ナンシーさんは火魔法が得意って事なんですね」

「ナオ君は、理解が早くて助かるよ。つまりは、そういう事だ」


 シンシアさんもナンシーさんも、僕の答えが合っているとニコリとしてくれました。

 そう考えると、僕の髪色ってとっても珍しいんだね。


「そして、複数魔法を使える人はとても賢いって言われている。一つの属性だと、普通の人と大して変わらないみたいだ。ナオ君がキチンとした受け答えが出来ているのも、きっと全属性の魔法が扱えるのが大きいと思っている」


 うーん、頭の良さとかは今まで考えた事がなかったなあ。

 うちの家族もこんな感じで普通に受け答えしていたけど、それも魔法が使えたからなのかな。

 僕は、スラちゃんと一緒にうーんって考えちゃいました。


「ははは、そこまで深刻に考えなくてもいいよ。それじゃあ、今後の事を話そうか」


 あっ、ヘンリーさんがニコリとしながらも声色が真面目なものに変わった。

 僕とスラちゃんは、また姿勢を正しました。


「まずは、私達がパーティから追放されたナオ君を保護した事になる。これは何となく分かるかい?」

「はい。あの、お姫様抱っこをされましたので……」

「ナオ君は女の子みたいに可愛いから、あながち間違ってはいないね」


 ヘンリーさんは少し笑っているけど、あの時は何が何だか分からなかったけど、今思うと結構恥ずかしい光景だよね。

 僕は、思わずちょっと顔が赤くなっちゃった。


「後は、ナオ君は私たちと一緒に行動して欲しい。もちろん無理強いをさせるつもりはないし、試験期間は設けるよ」

「あの、それって、僕とスラちゃんが勇者パーティとして行動するって事ですか?」

「そういう事になる。ナオ君とスラちゃんは聖魔法が使えるから、私たちとしてもとてもありがたいんだ」


 な、何だか一気に話が大きくなっちゃった。

 僕が勇者パーティに入るなんて。

 スラちゃんは問題ないって言っているけど、流石に僕も分からないよ。

 でも、試験期間もあるんだよね。

 どっちにしても、いま頼れる人がヘンリーさんたちしかいないんだよね。

 僕は、意を決しました。


「その、まずは試験期間でお願いします」

「ああ、それでいい。気楽にやっていこう」

「ナオ君、宜しくね。歓迎するわ」

「ナオ君ならきっと大丈夫だよ。私、楽しみにしていたんだ!」


 僕は立ち上がって、スラちゃんと共にヘンリーさん達と握手をしました。

 ヘンリーさんたちは、僕だけでなくスラちゃんにもキチンと握手をしてくれました。

 やっぱりとても良い人だね。


「さて、この後色々とやらなければならないな。ナオ君、その服ってもしかして……」

「はい、家から連れられた時に着ていた服です。他の服が買えなかったので、ずっと生活魔法で綺麗にしていました。今は冬なので、薄手の布を被って何とか寒さをしのいでいました」

「自分たちは豪華な服を着ていたのにな。もしかしたら、ナオ君に自分たちの服を見せつけて立場を分からせていたのかも知れない。想像だけど、食事面も差別していたのだろう。あの三人とナオ君の体格が極端にちがうのも、きっとそのせいだね」


 うーん、僕的にはあの三人はそこまで考えていないと思うなあ。

 でも、お金がなくて服が買えなかったし、食べるものも少なかったのは確かです。

 それに、今は手持ちのお金が全くありません。

 アイテムボックスの中も空っぽです。

 すると、シンシアさんとナンシーさんがとある提案をしました。


「とても綺麗なお顔なのに、ボロボロの服じゃ可哀想だわ。取り急ぎ、ギルドの売店で一式揃えましょう」

「あ、あの、シンシアさん。僕、いまお金を持っていなくて……」

「何を言っているのよ。そのくらい、お姉さんが出してあげるわ。後日、ゆっくりと装備を見繕いましょう」

「私も、ナオ君の服を見繕ってあげるわ。ふふ、弟っていなかったからとても楽しみだわ」


 うん、シンシアさんとナンシーさんがどんな服にするか、とても盛り上がっています。

 ヘンリーさんもギルドマスターも、諦めろといった表情をしています。

 どんな装備になるのか、張り切っている二人を見ると何だかとっても心配です。

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