第16話 突然ですが、目撃します

(ユニフォード視点)


 あたりには黒煙が漂い、崩れた建物の破片が積み上がっている。


 残骸に隠れながらあたりを見渡すが、モンスターの姿は見当たらない。


 先ほどの竜もどこかに行ったようだ。


「オートデン君、無事か」

「ああ、酷い目にあったぞ……」


 倒れ込んでいたオートデンが体を起こす。


「さて、どうするか……モノウィッチも見当たらないし、さっきの混乱ではぐれてしまったようだね」

「一旦入口まで戻るのはどうだ、先生」

「ああ、それもいいな。……いや、ちょっと待て」


 入口とは逆方向の数百メートル先、つまりギルドがある方向で何やら戦闘が起きているように見える。


 あれはおそらく王国軍の魔法使いと……例の十枚羽グレイワイバーンだ。


「ま、まずいぞ先生! あれ多分先輩ビブリオカスター隊たちだ!」


 私の後ろからその様子を見たオートデンが焦って言う。


 なるほど、弟子たちは辞めたあと王国軍に入ったとのことだったから、この緊急事態で招集されたのだろう。


 オートデンが「まずい」と言ったとおり、こちらが監視に気づいたとバレれば厄介なことになる。モノウィッチの考えたオートデンにスパイをさせる案もご破産だ。


 オートデンは目を細め、遠くで戦っているのが誰かを確認する。


「あれは多分……カルディオハイセと……いや、他には幹部連中は来ていないっぽいな」


 ということは、ビブリオカスター本人をはじめとする主力が揃っているわけではないらしい。


 変異種とはいえグレイワイバーンぐらいならその戦力で余裕だと考えているのか? その割に接戦に見えるが。


「どうするか……ここで待機しておくか、あるいは……ん?」


 考えていると、近くの人影に気づく。


「誰か来た、隠れよう!」


 オートデンに小声でそう声をかけ、その場で2人屈む。


「(とっさに隠れてみたが……モノウィッチ君かな?)」

「(そうかもだな……いや違う先生、あれはノア先輩だ!)」

「(なんだと)」


 そこにいたのはモノウィッチではなく、私の元弟子ノア・フィロコット。


 弟子の中ではリキュ・サイコフィールドに次ぐ実力者だ。


 何やら魔道具を使って誰かと連絡を取っている様子である。


「え〜ごめーん! 遅刻しちゃった笑。もうみんなやってんの? うん。あー、

ギルドの方ね。見える見える! え、なんかヤバそうじゃない笑?」


 相変わらず挑発的な口調だ。


 話から察するに、フィロコットが遅刻して後から合流という感じのようだ。


 「ヤバそう」だというのは、やはり国軍側が押されているということだろうか。


 引き続きフィロコットの会話に耳を傾ける。


「え、リキュが来てない? なんで? いや、それは私悪くなくない笑? うん。いや、私と一緒じゃないよ〜、知らない知らない」


 サイコフィールドが来ていないらしい。


 どうりで、やっぱり戦力が想定より不足しているようだ。


「うん、すぐ行く〜! あ、ちょっと待って……。いや、なんでもない笑。じゃあね〜」


 そう言って、フィロコットは通話を切る。


 すると、


「ねぇそこ、誰かいるよねぇ笑?」






■あとがき

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突然ですが、今日から魔法が使えなくなります。 〜もはや用無しと追放された宮廷魔術師、頭脳を活かし知識無双で再び成り上がります〜 しまかぜゆきね @nenenetan_zekamashi

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