第12話 突然ですが、監視されていました:続き

「では、本格的に尋問を始めましょうか」

「ひぃ!」


 モノウィッチが、ずいとオートデンに迫る。


「くっ、こうなったら……」


 そう言うとオートデンは急に目を閉じた。


 え、なに? 寝た?


「その手は食いませんよ」


 モノウィッチがオートデンの頬に往復ビンタする。


「あ痛ったぁ! ご、ごめんモノウィッチやめて。もうしないから! ちょっと、い、痛い」

「ちょ、モノウィッチ君もうやめてやれよ……」

「はい」


 私がさすがにドン引きして止めると、モノウィッチはおとなしくやめた。


「というか、モノウィッチ君。この子誰だっけ? なんで寝ようとしてたの?」


 その私の質問に答えたのはモノウィッチではなくオートデンだった。


「えっ!? 先生、私のこと覚えてないの!? ネネ・オートデンだよ! 弟子の!」

「あ。 あ、ああ〜!」


 どうりで見覚えがあるわけだ。


 やりとりを見ていたモノウィッチが呆れた様子で口をひらく。


「……先生。話は変わるのですが、先生は教育者として自分を恥ずかしいと思った経験はありますか?」

「おい絶対話変わってないだろ」


 人の名前を覚えるのは苦手だ。


「本人の言うとおり、彼女は元弟子のネネ・オートデンです。固有魔法は自動書記オートマティスム。眠るなどして無意識状態になることで実力以上の能力をランダムに解放できる魔法です。十中八九、木の上などから私たちを見張っていて、固有魔法を使おうとして落ちたんでしょう」

「ギ、ギクゥ!」


 オートデンよ、口でギクゥ!と言うやつがあるか。


 まあ、こちらとしては好都合だ。


「オートデン君、君はどうやら私たちを監視していたようだが、それはどうしてだい?」


 直球で聞いてみるが、オートデンはそっぽを向く。


「そ、それは言えない」


 今度はモノウィッチが話しかける。


「……実は私、最近リキュ・サイコフィールドと文通しているんです。ですからあなたスパイのことを彼女に問いただそうと思っているんですが、あなたが全部話せばうっかり・・・・そのことを手紙に書き忘れるかもしれません」

「フ、フハハハハハ! バレてしまっては仕方がない! なんと私は国王軍ビブリオカスター大隊幹部の指示で動いているおまえたちの監視なのだ!」


 なんか格好つけてるけど、上司に失態をチクられたくなくて白状しただけである。


「というか、モノウィッチ君。サイコフィールドと文通していたのかい?」


 リキュ・サイコフィールドといえば、気性は荒いが私の弟子の中でも上位の実力者だ。


「え? 嘘に決まっているじゃないですか」


 こいつ、鬼か?


 しかし騙されていたことに気づいたオートデンは何故かニヤついている。


「ナハハ、バカなモノウィッチめ! 文通が嘘とわかった以上、もう答える義理はないのだ!」

「いえ、いずれにせよあなたが私から逃げられると思っているんですか?」

「……思わない!」


 ……この子はいわゆる「アホの子」というやつなのだろうか。

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