第11話 突然ですが、監視されていました

「──ぐえっ!!」


 ……ぐえ?


「モノウィッチ君、今『ぐえ』って聞こえたよね?」

「はい、あちらから。女性の声でした」


 そう言ってモノウィッチは茂みの中を指さす。


 確かにその方向から声が聞こえた。


 ということは、人間?


「……怪我人かもしれないし、ちょっと見てみよう。魔法を使った気配がしたから、一応気をつけてな」

「わかりました」


 モノウィッチが自分の杖を構える。


 それを確認して、私とモノウィッチは音の聞こえた方にゆっくりと歩みを進める。


 そしてそこには──


「ぐぐぐぐぐぐぐ……痛ったぁ……」


 頭を抱えてうずくまる金髪の少女(幼女?)がいた。


 どこかで見覚えがある。


 確かこの子は……


「誰だ……?」

「オートデンじゃないですか。何しているんですか?」


 モノウィッチが名前を呼んで話しかける。


 話しかけられ、こちらに気づいたオートデンは最初何が起きているのかわからない様子だった。


 が、状況を把握するとどんどん顔面蒼白になり、あからさまに焦り出した。


「モモモモノウィッチ、あ、いや、そっちこそ何してんだ?」


 そう聞かれたモノウィッチは、少し間をおいて言う。


「……今は先生と一緒に、素敵な古民家カフェを探していたところです」

「な、なんでだよスライム狩りに行くんじゃなかったのか!?」

「どうしてあなたがそのことを知っているんですか?」

「あ! いやそれは」


 ……モノウィッチ、鎌をかけたな。


 そしてこの子も面白いほど簡単に引っかかるなぁ。


 とはいえまだ諦めていない様子だ。


「モノウィッチ、それはそのな、ちょっと今日はな、その、あの〜、一旦帰っていいかな?」


 それを聞いたモノウィッチは、微笑んだ。


「ダメに決まってるじゃないですか」



 と、いうわけで。


 オートデンをとっ捕まえ、尋問することになった。


 まず、モノウィッチが動きを封じている間に私が身体検査を行った。


「まあ、普通の荷物と……あとは、これは魔法書と魔符? ええと盗聴術式に隠密術式……」


 荷物を漁ると、穏やかではなさそうなものが出てきた。


「オートデン、これを使って何をしていたんですか?」

「も、黙秘権を行使する!」


 その後も、武器などを隠し持っていないかなど確認する。


 そうして一通り検査が終わった。


 モノウィッチはオートデンが持っていた隠密魔法に関する品々に目をむけ、関心したように言う。


「それにしても先生、よく気配に気づきましたね。かなり高級な隠密術式ですよ、これ」

「ふふん、すごいだろう。どうやら魔法が使えなくなっても、魔力の流れに対する感覚は残っているみたいだ」

「なるほど……」


 モノウィッチはやや目を見開いて、めずらしく本気で驚いた様子だ。

 それから、小さな声で何かボソッと言った。


「……普通、魔法が使える人でも・・・・・・・・魔力の流れの感覚なんてわからない・・・・・・・・・・・・・・・・はずなんですがね……」


「今何か言った?」

「いえ、なんでもありません」

「? そうか」

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