第10話 突然ですが、スライム倒しにいきます

「すみません、あまり時間は取れないので。手短におねがいしますね。

 先生を待たせていますから。


 ──え? ああ、心配には及びません。あくまで作戦の一環です。

 勝手なこと?……私の裁量を認める代わりに、私は幹部としてあなた方に力を貸しているんですよ?


 ──ああ、魔王様が? ……わかりました。では、こちらで対処しておきます。

 それよりも、以前に指示していた仕事についてはどうですか?


 ──はい。はい……なるほど。それだけですか?

 いえ、結構です。

 では、引き続き仕事は確実に・遅滞なくお願いします。」



   - -



(ユニフォード視点)


「やっぱり杖がないと落ち着かんなあ」


 私とモノウィッチは今、森の中の道を歩いている。


 スライムを倒しランクをアイアンまで上げるためだ。


 ここから少し歩いた場所に、スライムが狩れる場所があるそうだ。


 で、それにあたり私が長年使っていた魔法の杖をギルドに預けてきた。


 使わないのに持っていてもスライム狩りの邪魔になるかと思ってのことだ。

 

 ギルドには冒険者をサポートすべく万全の装備品預かりサービスが用意されているらしい。


 今回の魔法の杖など、使わない高価・貴重な品は、宿ではなくギルドに預けておくのが安心とのことだ。


 しかし、今まで肌身離さず持っていた大切な杖を預けておくというのは落ち着かないものだ。


 やっぱり持ってきた方が良かったかもしれない。


「……ギルドもちゃんと私の杖を守ってくれるのだろうか」

「ギルドに預けていた装備が盗まれたり壊されたりしたことはほとんどないそうですよ。あるとしたら、ギルドのある街ごと滅びたときくらいです」

「そうなのか」


 そこはやはり長年のノウハウの蓄積があるのだろうか。



「しかしよくよく考えてみると、今の時期にグレイワイバーンというのは、季節外れだな」

「そうなんですか?」

「ふふん、モノウィッチ君。勉強が足りていないのではないかね? グレイワイバーンは渡竜わたりりゅう。そして今の時期には普通、北方に向かいここよりも北のシアブルク山脈の上を飛んでいるものだ」


 渡竜は、季節ごとに長距離を移動することで気温変化に対応する種類のドラゴン類のことだ。


「シアブルク山脈というと、あの針みたいな尖った崖がたくさんある?」

「そう。人間やモンスターは迂回せざるを得ない険しい山脈だが、上空を一っ飛びすれば越えることができる。それができる。そう、グレイワイバーンならね」

「あの距離を一っ飛びですか」

「だから渡竜はその忍耐強さ、体力が特徴なんだ」

「先生とは大違いですね」

「ねえ、なんで急に私を刺すの? ──って、ん?」


「え?」


 私がその場に立ち止まり、モノウィッチは怪訝な表情を見せる。


 なぜ急に立ち止まったのかといえば、周囲の森から気配のようなものを感じたからだ。


 周辺の魔力の流れが遮られるような、今までにも幾度となくあった感覚だ。


「……何かがいる気がする」

「モンスターですか?」

「いや、どうだろう……」


 これはあるいは、人間の……


「──ぐえっ!!」



 ……ぐえ?

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