第8話 突然ですが、ニ番手がいなくなりました

(三人称視点)


 国王軍リア・ビブリオカスター大隊。


 それがビブリオカスター率いるユニフォードの元弟子たちの新たな所属だ。


 ビブリオカスター大隊には王宮のある一室が割り当てられ、今日もそこで幹部の話し合いが行われていた。


「……モノウィッチの野郎、何考えてやがる」


 ビブリオカスター大隊第4位の実力を持つリキュ・サイコフィールドはそう悪態をつく。


 議題に上がったのは、ユニフォード、そして唯一ビブリオカスターについてこなかったニ番手アリス・モノウィッチの動向である。



 ユニフォードの追放が決定したあの日、弟子たちは話し合いあることを決めた。


 それは泥舟からいち早く抜け出し、皆で国王軍に所属することである。


 元々、軍部で出世をするために弟子入りをしていたものがほとんどだ。意見は一致し、すぐさま計画が練られた。


 そして計画通り全員で辞表を提出し、ビブリオカスターたちはそのまま即日王国軍所属となった。


 ──次席のアリス・モノウィッチを除いて。


 モノウィッチも、当日集まるまで皆と同じく計画に従っていた。


 が、いざ辞表を出すときになって無断でユニフォードの元に残った。


 そしてそのまま、ユニフォードに同行しどこかへ行ってしまった。


 ビブリオカスターたちにとって、手元に2番手の実力者がいなくなること自体も痛手ではあるが、最も大きな問題はモノウィッチの目的が不明なことである。


 皆ユニフォードの魔法技術を見て盗み、最終的にはユニフォードの弟子というステータスからキャリアを築くべく、弟子入りをした。


 であれば魔法という1番の武器を失い失脚した師匠など、ついていっても何も得るものはない。にもかかわらず、モノウィッチはそれを選んだ。



 大隊内第3位ルルア・カルディオハイセが、ビブリオカスターに尋ねる。


「リア先輩、師匠とアリスの2人に監視はつけてるんですか」

「ああ。すでに指示した。しばらくは様子見だ」


 しかし、サイコフィールドは不満を隠さない。


「めんどくせえ、見つけ次第全員でぶっ殺しに行けばいいだろ。モノウィッチの野郎、絶対何か企んでやがる。あの気味悪い固有魔法スキルを使ってな」

「ま、何か企んでるだろう、というのは全員が思っていることよね」


 5番手ノア・フィロコットもそううなずく。


 モノウィッチが何を考えているかわからない人物であるのは全員の共通認識だ。


 が、サイコフィールドの態度にカルディオハイセが不快感を示す。


「リリアさん、リア先輩の指示に従わなければわかっていますね」

「んだカル公、お前いつからそんな偉くなったんだコラ」

「上司に従うのが規則ですから」


 言い争う2人を横目に、ビブリオカスターは俯く。



「モノウィッチ……一体なにを考えている」





 ──ちなみに、大隊内でニ番手の実力を持つ人見知り ミリ・セントボーンはこの会議中一度も口を開かなかった。

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