第7話 突然ですが、ワイバーンと戦いませんか

 モノウィッチの話を聞きながら、受付に向かう。


 近づいたところで、モノウィッチが後ろに一歩下がった。 


「ん? 君は登録しないのかい?」

「私はすでに登録してあります。以前からプライベートでやっていたので」


 どうりでギルドに詳しいわけだ。


「あれ? うちって副業OKだったんだっけ?」

「……誰も守ってませんでしたよ」

「おい」


 私全然慕われないじゃないか。


 それはさておき(おきたくないが)、受付嬢に話しかける。


 少し緊張するな。



「あの、すいません、冒険者登録をしたいのですが……」


 私が話しかけると、受付嬢は驚いた様子を見せた。


「えっ!? あれっ!? ユニフォードさん!? なんでこんなところに」

「ちょ、ちょ、声が大きい!」

「あっ、すいません……どうされたんですか? ユニフォードさんと言えば情けなく王城を追い出された挙句あげく、枕で涙を濡らしながら実家に逃げ帰ったと専らの噂で……」

「おい誰だそんな噂を広めたやつは」

「謎です」

「謎なのか」


 と、いけないいけない。


「それでだね、あの、冒険者登録をしたいのだが……」

「えっ……?」


 なんだその反応は。「もう魔法使えないのに!?」とでも言いたげじゃないか。


 受付嬢は、驚きながらも応対を続ける。


「その、登録は結構なのですが……屑鉄くずてつランクからの開始ですが問題ありませんか?」

「構わないよ」

「では、登録する際の職業名はどうされますか?」

「そりゃ魔術師で……」

「えっ……?」


 なんだその反応は。「もう魔法使えないのに!?」とでも言いたげじゃないか。


「じゃあ、元・魔術師で」

「現?」

「え?」

「現なんですか?」

「……現・無職だが。おい、いいだろ別に元職振りかざしてる奴なんていくらでもいるぞ」

「では元・魔術師、現・無職で登録させていただきます」

「なんかいやだなぁ」



   - -



 戻るなり、モノウィッチは言った。


「先生、これ他意はないんですが、過去の栄光にしがみつく人ってみっともなくないですか? 他意はないんですけど」

「他意しか感じないが。で、次はどうするんだ?」


「魔王軍戦に参加するには最低でもブロンズランクになる必要があります。ですので、まずはランク上げのための仕事をこなします」

「ブロンズランク?」

「先生は今屑鉄ランクです。そこから一つ上がるとアイアン、もう一つ上がるとブロンズです」


 案外近いな。


「ただ、多くの冒険者はアイアン止まりですので。屑鉄からアイアンは簡単ですが、そこからが高い壁です」


 まあ、よくある話だな。


「アイアンにはそこらでスライムでも倒せばすぐになれます。で、問題はそこからです。手っ取り早くブロンズになるために、私に一つ作戦があります」

「ほう」

「それが、これです」


 そう言って、モノウィッチはギルドの掲示板に張り出されていたチラシを指差した。


 これは……



「グレイワイバーン討伐?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る