太陽のヒミツ

かくしたおもい

 ギギギ……ぐ、しゃぁ!


 棚がひしゃげる音と土ぼこりに、私はしりもちをついた。


 たおれた棚は原形をとどめておらず、ガレキとなって出口をふさいでいる。


 そのすき間に、人の腕が見えた。さっきまで、あそこにいたのは……!


「りこ!」


 声を張りあげて、私はガレキのもとにっていく。


「た、竹鳥さん……」


 ぽつぽつととぎれた声に、ほこりの向こうから聞こえた。土まみれの制服で、真っ青な顔をしたりこがいた!


「よかった、無事で……!」


 しかし、りこは首を横にふる。


「わ、私を助けて、穂村くんが!」


 土ぼこりが完全に晴れる。ガレキのスキマに見えたのは……下敷きになった、太陽!


「太陽! 返事してっ!」


 私が呼びかけても、反応がない。


「早く出てきて! ガレキは、いま退かすから……!」


 私はガレキを持ちあげては、放りなげる。太陽を引きずりだすまで、どれだけ汚れても、手がズキズキ痛くなっても、やめない……!


「つく、ね」


 ようやく上半身が出てきた太陽が、せきこみながら私の名前を呼んだ。


「そこに、いるか?」


「いるよ! だから、はやく出てきてよ!」


「……よかった」


「いいわけないでしょ! こんなになって、なにが……!」


「言っただろ」


 とぎれとぎれの呼吸に混ぜて、太陽は言う。


「オレは、S組がなくなったって構わない。……それで、つくねが傷つかなくなるなら」


 ガレキを持ちあげたまま、私は止まった。


「なに、言ってんの。太陽……」


「つくねは、いつもだれかのために一生懸命で、自分のことをないがしろにして……オレたち家族のためにって、がんばりすぎる」


 苦しそうな太陽は、それでも目を細めて笑っている。


「つくねが明日も生きてくれたら、オレはとなりにいなくたって、いい……」


「……うるさい、うるさい! そんな言葉、聞きたくない!」


 私は、ガレキを力任せに放りなげる。


「早く、ここから出るよ!」


 太陽にのしかかるガレキもあとわずか。出られたら、傷もすぐに治るはず……!


 太陽は、体を引きずって私に向かってくる。手を、こちらにのばして……


 パチン、と、私の鼻を指で弾いた。


「……じゃあな、つくね」


 のけぞる私を、太陽がおす。倉庫の外まで転がった私は、りこに受けとめられる。


 その、すぐ、あと。


 太陽を中に残したまま、倉庫が全壊した。

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