告白

「この一ヶ月、脅迫状を学園内にばらまいたのは、私です。七星に植木鉢を落としたのも、ネコのリボンをほどいて逃がしたのも……私がやりました」


「どうして、そんなこと……」


「すべてはS組を解体して、あなたを穂村くんから引きはなすためです。……竹鳥さん」


 私を太陽から、引きはなす? りこさんが胸の前でぎゅうっと手を握る。


「どうせ、私の気持ちが穂村くんに届くことはないんです。だったら、S組なんてなくなってしまえばいい!」


 そしてりこさんは、真っ赤な目で私をにらみつける。


「穂村くんのとなりにいるのが当たり前なあなたには、わからないでしょう? この一ヶ月、私がどれだけ苦しかったのか!」


「…………」


「穂村くんが竹鳥さんといるのを見るだけで、息もできなくなる。心がぐちゃぐちゃになる! ……苦しいくらい、私は穂村くんが好きなんです!」


 好き。その言葉といっしょに、ぽろぽろとりこさんの目からなみだがこぼれた。


「りこさん」


 私が一歩近づくとりこさんは目をこすって、鼻をすする。


「くだらないと思いますか? 学園を巻きこんで、全員に迷惑をかけて……」


「思わないよ。人のことを好きになる気持ちが、くだらないわけない。でも、こんなやり方はおかしい」


「でも、でもっ!」


「でもじゃ、ない! 聞いて、!」


 するどく強く言ったことで……りこは、固まった。


 あなたは大事なことが見えていない。私は、りこの肩を力いっぱいつかむ。


「こんなやり方で、好きな人を振りむかせることができたとき……あなたは、本当に幸せなのっ?」


「…………!」


 肩から手をはなし、一歩ふみこんで……私はりこを抱きしめた。


「泣きたくなるほど大切な気持ちでしょ? 私を理由にして、あきらめないで」


「竹鳥さん。私……ひどいこと、した、のに……!」


「そうだね。ちゃんと話してくれなきゃ、許さないよ。だから、いまは落ちついて」


 しゃくりあげるリズムに合わせて、頭をなでて……どれだけ時間が立っただろうか。


 りこは私からはなれて、太陽の前に進みでる。なみだをぬぐって、まっすぐ太陽を見る。太陽は……なにも言わずにりこの言葉を待っている。


「穂村くん。私は、あなたが好きです」


 ふるえる声で、りこは正面から告白した。


「一目ぼれでした。あなたのことを見ているだけで、胸が高鳴って、冷静でいられなくって……あなたのとなりにいる竹鳥さんが、うらやましかった」


「…………」


「私は、あなたのとなりにいたいです。……私を選んでくれますか?」


 りこの告白を受けとめて、太陽は静かに頭を下げた。


「ありがとう。でも……ごめん」


「それは……私がS組を解体させようとした犯人だから?」


「ちがう。……オレにも、大切なやつがいるから。雲沢の気持ちには応えられない」


 大切なやつ。太陽の言葉に、のどが熱っぽくなって、鼓動が速くなっていく。


 ずっといっしょだった太陽が、まるで別人みたい。こんな一面を見て、ドキドキしないわけがない。


「そう、ですよね……」


 りこは、天井を見あげる。頰を伝うなみだは止められない。


「ごめんなさい、穂村くん。竹鳥さん。私……っ!」


 たえきれなくなって、りこは倉庫を出ていくために駆けだす。


 いっぱいいっぱいなりこは、ならんだ棚のひとつにぶつかってしまう。


 その衝撃で……メキ、と、棚が音を立ててたおれてきた。

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