ひろがる疑惑
映っていたのは……
「つくね。あわててどうしたの?」
旧校舎の教室までもどってきた私をでむかえたのは、ミハル姉。机の上のカメラを、なにやらカチャカチャといじっている。
「ミハル姉! それって、りこさんのカメラ?」
「えぇ。昨日転んだはずみでこわれてしまったみたいで、直しているのよ」
「そのカメラ、過去の記録もあるんだよね? 脅迫状の犯人が映っていないかな?」
「これから私も調べる予定だけど、修理しないことには始まらないわ。破損が目立つし、専門店に預けたら二、三週間はかかるかも……」
そんな時間ないよ! 早く真犯人を見つけないと!
「ミハル姉、なんとかならないかなぁ?」
「つくね。私にだって、できることとできないことはあるわ。無理を言って困らせないで」
うっ。たしかに……ちょっとミハル姉にたよりすぎかも。
「ご、ごめん、ミハル姉。考えなしなこと言って……」
「まぁ、もう修理は終わったけど」
ズル! ずっこけて立ちあがると、机の上には新品同然のカメラが!
「修理だけならすぐに決まっているじゃない。ついでに手ブレ防止補正とナイトモードを搭載させて、録画容量を3倍に増やしただけ」
「じゃあ、無理なことって?」
「『顔認証システムを応用して、真犯人を見つける機能をつけてほしい!』とか言うつもりでしょう? いくら私でもそんなカメラを作るのは、一ヶ月はないと無理よ」
「一ヶ月あったら、そんな魔法のカメラができるのっ?」
なんて、ツッコミを響かせている場合じゃない。真犯人の証拠を見つけるんだ!
「預かるとき、雲沢さんに映像チェックの許可はもらったわ。いっしょに観ましょう」
ミハル姉がカメラとパソコンをつないで、これまでの活動記録を映しだす。犯人の手がかりや、犯行の瞬間が撮れていたら、太陽の疑惑を晴らせるはず!
希望を持ってチェックを始めた私だったが……数時間後、絶望感に包まれる。
その理由は、ひとつ。太陽がほかの事件にも関わっている可能性が出てきたからだ。
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