家族の気持ち
太陽の本心は?
デートの翌日、太陽はバットを片手に旧校舎を出ていった。今日は野球部の助っ人だ。
そして私は、太陽のあとをついていく。大ケガをしたはずの足はすっかり回復しているみたい。
『太陽の力は、体の回復が異常に速いことよ』
昨日、旧校舎に帰ってきてからミハル姉から明かされた太陽のヒミツを思い出す。
『連日助っ人にかりだされても、疲れだってすぐに回復しちゃう。さらに、ケガも一瞬で治ってしまうことも大きな特徴ね。まぁ、不死身とまではいかないけれどね』
なんてミハル姉は言っていたけど……私は昔、目の前でこの力を見たことがあったんだ。
私と太陽は学園に来たときから一番近くにいて、ケンカばかりしていた。
言いあらそいがヒートアップして、取っ組みあいになったことだってある。その度にミハル姉が止めてくれていた。
でも、あるとき私はやりすぎてしまった。
私が突きとばして、太陽の手をついた場所に……とがった石があった。
手のひらから真っ赤な血が流れたことにびっくりして、とんでもないことをしてしまったと思った私は、謝りながら泣いていた。
でも、太陽はというと……痛がるそぶりも見せず、私に笑いかけた。
『よく見ろよ。オレは、ケガなんてしていない』
太陽はそう言って、手のひらを私に見せてきた。深い切り傷はみるみるうちにふさがって、私が目をゴシゴシこすっているうちに、キズも血も綺麗さっぱりなくなっていた。
『おかえしだ。つくね』
なんて、鼻を指で弾いて、私のあげた変な声にふたりで笑った。
「……太陽って、昔からそうだった。いつも、私たちのために気持ちをかくしちゃう」
言いあって、いがみ合ってばかりの太陽だけど……根っこは優しすぎる男の子だから、私は太陽の本心を聞かなきゃいけない。
「やっぱり、太陽ときちんと話さなきゃ。七星さんにも伝えて……」
「わたくしが、なにか?」
声をかけてきたのは、七星さん!
「竹鳥さん。昨日は大変だったようですね」
「……うん。私は平気だったけど、りこさんと太陽はあぶなかったよ」
「ケガがなくて、なによりです。しかし、目撃者がまたウワサを流しているようですわ」
「S組に関わると、不幸になる……とか?」
七星さんは眉間にシワを寄せたまま、こくりとうなずく。
「やはり犯人を早急に突きとめねばいけませんわ。こんな学園を、わたくしは望みません」
七星さんの顔は、真剣そのもの。S組をおとしいれる脅迫状の犯人を見つけなきゃいけない、と、本気で思っているんだ。
でも、S組を解体させたいのなら、脅迫状って好都合なはずじゃ? 私がそんなことを考えていると……
「以前も言ったでしょう。学園全員で意見をぶつけ合い、この学園を作っていきたいのです。カゲでこそこそと印象を操作するやり方など、言語道断!」
「わ、私、何も言っていないよ?」
「竹鳥さんは、表情が読みやすいのですわ」
クスッと笑ってから、七星さんは私を見る。
「竹鳥さんは、S組を家族と言いましたが……それは、わたくしと同じですわ」
「同じ?」
「はい。わたくしにとって、この学園のみなさんが家族なのです」
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