危機一髪……?

「先にもどる。荷物は、オレが持っていくからな」


 お会計まですませて、太陽はお店を出ていってしまった。


「待ってよ! 行こう、りこさん!」


「は、はい!」


 追いかけて、横断歩道を渡った太陽に私が追いついたとき……


「きゃっ!」


 うしろでりこさんが悲鳴をあげる。私が急がせたせいで、道路で転んでしまった!


 すぐに助けに行こうとしたとき、信号が赤に変わる。道路に入ってきたトラックが、りこさんに向かってくる……!


「危ないッ!」


 私が声を上げた瞬間、太陽が道路に飛びこんだ。


 りこさんに気づいた運転手が急ブレーキをかける。でも、止まれない……!


 ……ドン!


 鈍い音に、周りの人が目をつむる。でも、私は太陽がりこさんを救った瞬間を見ていた。


 太陽は歩道にたおれこみながら、しっかりとりこさんを抱きかかえて、守ってくれた!


「雲沢。大丈夫か?」


 太陽は起きあがって、優しく声をかける。放心状態のりこさんは、コクコクとうなずいた。


「き、君! 大丈夫かい?」


 あわてて駆けよってくる運転手の男性に、太陽はけろりと答える。


「はい。なにもありませんでした」


「で、でも、ぶつかったんじゃ?」


「いいえ、どこも。急に飛びだして、すいません」


 太陽はぺこりと頭を下げて、エコバッグを拾いあげる。


「太陽! 平気っ?」


 人ごみをかき分け、私は平気な顔をしている太陽にならんだ。


「太陽! いま……ぶつかっていたよね?」


 そう、私はちゃんと見ていた。りこさんをかばった太陽の足は、車とぶつかっていた!


「あぁ。それがどうした?」


 太陽はあっさりうなずく。


「どうした、じゃないよ! 足、大丈夫なの?」


「まぁ、さっきまで骨が折れていたっぽいけど」


「折れっ?」


「でも……


 と言って、太陽は自分の腕をチラッと見る。アスファルトですりむいて、痛々しいキズになってしまっている。


 太陽は反対の手で腕をなでる。次の瞬間……キズはきれいさっぱりなくなっていた。


「帰るぞ、つくね」


 太陽は追突事故にあったなんて思えない足取りで、すたすたと歩いていく。


 ……これが、太陽のヒミツの力なの?

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