つくねと太陽

なんだって知っている、あなたと私

 レストラン「かめれおん」は、私の行きつけのお店。どんな色にも変わるカメレオンみたいに、どんな料理も作る! っていうコンセプトが売りなんだ。


 私と太陽、そしてりこさんの3人で、予約席に腰を落ちつかせた。


 メニューをぱらぱらめくっていくと、和食に洋食、中華料理にフレンチ……美味しそうな写真がならんでいる!


「もう何回も来ているのに、まだまだ全部のメニューは食べてないもんね。うぅ、迷うなぁ……りこさんはどうする?」


「あ、その、カフェオレだけで……」


「オレも決めたぞ。いっつも、つくねは優柔不断だよな」


「こういうのは、迷った分だけおいしいんだから! ……よし、決めた!」


 店員さんに来てもらって、メニュー表を指差す。


「これと、これ! あとカフェオレひとつです。お願いしまーす!」


 店員さんはペコっとお辞儀をしてから、お店のおくに入っていった。


「……つくね。オレの分まで注文したのか? どれを頼むって、言ってないぞ?」


「太陽の考えていることくらい、お見通し! 待ってて、お望みの料理が来るから!」


「なんだよ、それ……」


 しばらく待っていると……注文したお料理がやってきた。


 太陽の前には、山盛りのラーメン。私の前には、キラキラのパフェ。


「お待たせしました! 濃厚醤油ラーメン、野菜チャーシュー鬼マシがおひとつ! 続いてファビュラスフルーツパフェがおひとつ! 最後にカフェオレがおひとつですね? ごゆっくりお過ごしください!」


 店員さんは最後にスマイルを置いて、席を離れていった。


「…………」


 私と太陽は顔を見合わせると、お互いの前にある料理を入れかえた。


「やっぱり、まちがわれたね」


「いつものことだから、もう慣れたけどな」


「そだね。あ、あとでひと口ちょうだい!」


「いやだ」


「チャーシューとババロア、交換でいいから!」


「ふざけんな!」


 言いあいながら、ランチタイムは進んでいく。


 太陽は細いスプーンでアイスや果物をすくって、口に運ぶ。太陽は甘いものやスイーツが大好物だから、私の注文は大当たり!


「ねぇ、太陽」


「……プリンだけは、ぜったいに渡さないからな」


 ちがうってば。プリンよりも、大事な話!


「太陽がみんなのことを知っているみたいに、私だって太陽のこと、知っているんだよ! 毎朝ジョギングするために早起きしていたり、そのついでにゴミ出しをしてくれたり!」


「…………」


「数学のテストはゆううつとか、ホラー映画は苦手とか。特にゾンビものがダメ、とか!」


「どうでもいいだろ、そんなこと」


 窓の外を見る太陽に、私は続ける。


「あとは……うそをつくとき、太陽はいつもうつむく、とか」


 太陽は、私と目を合わせない。それでも聞かなきゃいけない。


「どうして『S組がなくなってもいい』なんて言ったの? 太陽だって、みんなとはなれたくなんてない。そうでしょ?」


 生徒会室で、太陽はうつむいていた。乱暴な言葉にムッとしたのは本当だけど、太陽は本気で言っているわけじゃないことは、わかっていた。


 だったら、どうしてあんなことを言ったのか? 私は、太陽の考えが聞きたいんだ。


「……言ったとおりだ。S組はなくなったっていい。それで……なら」


「え?」


 言葉の最後が聞きとれない。顔を近づけると……太陽は席を立った。

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