宇宙規模の品ぞろえ! ギガギンガマート

「今週もここだよね! ギガギンガマート!」


 学園内最大規模のホームセンター『ギガギンガマート』。食料品から機械の部品までなんでもござれ、学園の生徒が御用達のお店だ。


 私がカゴを持ち、太陽は一歩うしろをあくびしながらついてくる。


「まずは、恵くんのおつかいから!」


 やってきたのは、園芸コーナー。恵くんは明日の放課後に旧校舎のプランターに苗を植えるから、軍手やタオルを新調したいって言っていた。


「軍手もタオルも、いっぱい種類があるよね。どれがいいんだろ」


 棚を見あげる私の横で、太陽は軍手とタオルをひょいひょいとカゴに放りこんでくる!


「恵士郎は安くて量の多いやつを選ぶ。道具にこだわらなくても、あいつは一流だからな」


 なんて、私を待つこともなくエスカレーターに乗る。


「待ってよ! 次は、樹ちゃんの……」


「ペット用品、だろ」


 続いて足を向けたのはペットエリアの中、水槽がズラリと並ぶ淡水魚コーナー。


「玄関の水槽にいるメダカのエサが無くなりそうだから、予備と合わせてふた袋……」


 エサが売っている棚には、大容量のものから栄養満点のものまで、さすがの品ぞろえ! さて、樹ちゃんがいつも選んでいるのは……


「これだ」


 またもや太陽が商品を選びとる。ちょっと値段は高いけど、それだけ体に良い栄養がたっぷり入っているものだ。


「正解! よくわかったね?」


「樹は、動物たちにあげるものには妥協しない」


 カゴの中に袋を二つ入れて、太陽はさっさと歩いていく。


「でも、今度は難しいよ! なにせ、ミハル姉のおつかいだから!」


 最後は、工具や精密部品を取りそろえた一角。私だけじゃ、まず訪れない場所だ。


「製作中の発明品に必要なパーツを買ってきてほしいんだって。えぇっと……魚の眼っ?」


魚眼ぎょがんレンズ、だ」


 太陽が指差す方に、カメラのレンズが飾られている。これもいくつか種類があるけど、私にはもうなにがなんだか……。


「これと、これと、これ」


 目を回す私をよそに、太陽が迷いなく手をのばす。魚眼レンズと書かれたものをすべて、ひとつずつカゴにならべる。


「ミハルは試せるものはなんでも試すから、かたっぱしから買ってこいって言うはずだ」


「…………」


 太陽は品物選びにまったく迷いがなかった。みんなのことをよく見ている証拠だ。


「つくね、なにぼーっとしてんだよ」


「へ?」


「これで買い出しは終わりだ」


 と、ふくらんだエコバッグをひとつ、私にポンっと投げてくる。


「いきなりやめてよ! 危ないなぁ!」


「軽い方だ。どんくさいつくねでも、そのくらい受けとれるだろ?」


 余計なひと言を残して、太陽はもう帰ろうとしている。


 私は、空いている手で太陽の服をつかんだ。


「おつかいだけで、デートって言えないでしょ? お昼ご飯、一緒に食べよう」


「だから、最初っからデートなんかじゃない」


「もう予約もしているんだから! レッツゴー!」


 腕をがっちり組んで、私は太陽を引っぱっていく。


「ったく」なんて悪態をつきながらも、太陽は私についてきてくれる。これも、いつものことだ。

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