いざ、買い出しデート!

デートの計は待ち合わせにあり

 待ち合わせは午前10時。左腕のSウォッチを確認して、ふぅっとため息。


「もう、おそいなぁ……」


「まだ5分前だ。おくれてはいないだろ」


 ひとり言に、つっけんどんな返事が返ってくる。


 白単色のポロシャツに紺のスキニーパンツ、シンプルな装いの太陽が現れた。


「なんで、わざわざ待ちあわせるんだ? 今朝も旧校舎で顔を合わせたのに」


「わかってないなぁ。大事なのはムードでしょ!」


 私が得意げに胸を張ると、太陽は不満げに鼻を鳴らす。


「つくね相手に、いまさらムードもあるかよ」


「なにそれ! おめかししてきた女の子をほめるくらい、できないの?」


 涼やかなライトブルーのワンピースをヒラヒラはためかせる。ミハル姉に選んでもらった、渾身のデート服!


「……馬子にも衣装」


「孫の代にも着させたいくらい、似合っているってこと? もう、ほめすぎ!」


「今度、辞書で調べてみろよ」


 なんて、太陽は肩を落とす。


「どういう意味か、わかる? りこさん」


 私はすぐうしろのりこさんに聞いてみる。動きやすいパンツスタイルもバッチリ着こなすりこさんは、言葉を選びながら答えてくれた。


「馬子にも衣装は、どんな人でも着ている物さえ整っていたらそれなりに見えるっていう意味で、その……ちょっとだけけなす意味を持つことわざです」


「なるほど……って、ダメじゃん!」


 太陽は、りこさんをじろりとにらむ。


「なんで、雲沢もいるんだ?」


「学園投票も大詰めで、休日のS組の方の姿もきちんと記録するように、という七星の指示です。えっと、ジャマはしないよう、はなれた場所から見ています……」


「気づかい、どうも……」


 太陽は深い息をはく。


「だいたい、なにがデートだよ。いつもの買い出しだろ?」


 まぁ、そのとおり。S組には週に一度の買い出し当番があって、今週は私と太陽だ。


「物は言いよう! 私がデートって言ったら、デートになるの!」


「わけわかんねぇ……」


「はい、つべこべ言わない!」


 太陽の言葉をさえぎって、腕を引く。メモの順番に、お店を回らなきゃ!

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