コマコ捜索チーム、始動!

探しています! コマコちゃん

 日曜日、動物園の入場門の前に私たちは集合した。


「お待たせ!」


 私が最後のひとりで、すでに集まっていたみんな……恵くんに太陽、七星さんとりこさん、そして樹ちゃんが、こちらを向く。


「時間ギリギリよ、竹鳥さん! 5分前行動が基本ですわ!」


「ご、ごめん! これを朝まで作っていて……!」


 私は背負ったリュックを下ろして、中から大量の紙を引っぱりだす。


 タイトルにはデカデカと……『探しています! コマコちゃん』!


「なるほど、捜索を呼びかけるチラシですわね」


 その通り! 学園中に配ろうと思って用意した、手書きの自信作!


「すごいよ、つく姉ちゃん!」


 樹ちゃんは目をキラキラさせている。ふふん、そうでしょ?


「でも、どうしてパンダの絵が書いてあるの? コマコはネコだよ?」


「うぐっ……!」


 樹ちゃんの悪意ゼロの言葉が、痛い! そりゃあ、私は美術の成績も平均だけど……!


『ふふ……特徴はとらえているから、落ちこまないの』


 励ましの声は、腕につけたSウォッチから。


「ミハル姉は来ないの?」


『ちょっと、研究の報告資料が立てこんでいてね。その代わり、援護は惜しまないわ』


 その言葉のあとに、ピピピッ! と、左腕のSウォッチが音を鳴らす。見ると、画面にネコのマークのアプリが浮かびあがった。


「なにこれ……『キャットキャッチャー』?」


『少しでも役に立てばいいと思ってね。迷子ネコ探査用通信アプリを開発したの』


 声だけでも、ミハル姉が得意げなことはわかる。


『探したいネコの特徴を自動で認識して、付近をレーダーで探査してくれるわ。手がかりを識別すると、同時に位置情報を特定、移動経路を自動追尾。学園用スマホへのデータ連携も可能……と、まぁ、単純なシステムよ』


「へ、へぇえ。なるほどぅ……」


 私の頭はこんがらがっているけど、ミハル姉が言うなら、そうなんだ!


「近衛先輩。このアプリ、あなたが作りましたの?」


『えぇ。レポートの息抜きに作っただけから、あまり完成度は高くないけれど』


 七星さんとりこさんは、目を丸くしている。


「さ、さすがは『若き発明女王』ですわね……」


『Sウォッチは学園敷地内で使用禁止! なんて、こんなときまで言わないわよね?』


 七星さんはむむぅっと眉間にシワを寄せて、うなずいた。


「……課題解決のため、特例ですわ」


『ありがとう。探索範囲を少しでも広げたほうがいいから、ふたりひと組になったらどう? どちらか片方がSウォッチを持っているような組み分けがいいわね』


 ミハル姉の指示で、私たち6人は3つの組に分かれた。


 ひと組目は、恵くん・七星さんペア。


「さぁ、町中を隈なく、探しつくしますわよ!」


「あ、あわてずケガなく、行こうか」


 ずんずん進む七星さんに恵くんがついていく。恵くんのサポートがあれば大丈夫だよね。


 ふた組目は、太陽・りこさんペア。


「よ、よろしく、ね。穂村くん」


「…………」


 りこさんは、ぶっきらぼうな太陽に縮こまっている。ちゃんとリードしなさいよ!


 最後は、私と樹ちゃんペア。


「行こっか、樹ちゃん!」


「うん! ふたりで捜索開始だ!」

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