S組は災いのもと?

「なんか……おかしい、よね」


 私は、ミハル姉の背中にかくれながら、ぽろっとつぶやく。


 本校舎の廊下を歩いていると、周囲のみんなの様子がおかしいことに気づいた。


「きたよ、S組だ……」「あんまり近づいちゃダメだよね」「あぁ。どうなるかわからないぞ」


 みんなが私たちを遠巻きに見て、声の方を向くと目をそらされてしまう。ビクビクしていて、私たちにかかわらないよう、道を開けている。


 チクチクとした視線を背中に感じながら、私たちは生徒会室にたどりついた。


「……おそかったですわね」


 中では七星さんがソファに座って待っていた。制服を校則どおりに着こなしていて、左腕に「生徒会長」「理事長代理」と書かれたふたつの腕章を着けている。


「お呼びしたのは、次なる学園の課題をお伝えするため……でしたが、まずはこちらを見てください」


 七星さんはポケットから折りたたまれた紙を出して、私たちに見せてくる。


 新聞の文字を切りぬき、つなげた文章は……『S組は学園の災いの元。肩入れする者には、不幸がおとずれる』?


「今朝、本校舎のあらゆる場所にこのコピーがはりだされていましたわ」


「そんな……」


 私が言葉を失っていると、りこさんがえんりょがちに言う。


「花壇を作っていたとき、七星に植木鉢が落とされた場面を多くの生徒が見ていました。そのとなりには、竹鳥さんがいた……」


 たしかに、植木鉢は七星さんめがけて落ちてきていた。脅迫状の言葉どおり、災いがふりかかったんだ。


「りこ。根拠もなく責めるような言い方はやめなさい」


 七星さんはそう言ってくれるけど、表情は暗い。


「植木鉢を落とした犯人と脅迫状の犯人は、S組に強い反感を持っている同一犯とみて、生徒会でも調査は進めていますわ。しかし……」


「前回にも増して、ほかの生徒たちは協力的じゃないってことかしら?」


 ミハル姉が目を細める。


「ウワサのせいでS組に対して風当たりは強くなって『早急にS組をなくすべき』という意見が増えた。……ちがう?」


「お見通しですわね、近衛先輩」


 七星は肩をすくめると、学園用スマホを見せてくる。


「投票の途中経過ですわ」


【存続】……197票。【解体】……1,803票。


 これって、私たちにとって大ピンチだ。


 いまの銀ヶ島学園でS組を残したいって思っている人は、10人にひとりいるかいないか。ほとんどの人が、私たちがはなればなれになることを望んでいる……。


「……だからって、あきらめないよ」


 大ピンチだからこそ、私はむりやり顔を上げる!


「このあとの活躍次第で、学園のみんなの考えも変えられる! そうだよね!」


 私は、S組のみんなの顔を見る。ミハルお姉ちゃんは優しく微笑んでいて、恵くんは力強くうなずいてくれる。太陽だけは、そっぽを向く。


 ……あれ? ひとり足りない。


「樹ちゃん、どこ?」


「生駒くんは、すでに次の課題解決に向かいました」


 七星さんも私と同じように立ちあがり、ビシ! と指を立ててみせた。


「ふたつ目のタスクは……『動物園の看板ネコの捜索』ですわ!」

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