タスク① 終了!

こめた想いは、きっと

 私が最後の一輪を植えて、土を優しく固める。


「これで……完成!」


 ワァッ! 私の言葉に、みんなが歓声をあげた。


 ついに、花壇が出来上がった! 土色の爪が、なんだかほこらしい。


 竜巻騒動のあと、散らばったガラスなどの撤去や校舎の修繕に、みんなは大忙しだった。私と恵くんが先頭に立って作業をしていると、太陽、樹ちゃんも手伝ってくれた。


 作業が終わると、七星さんは再び花壇に植えるお花を用意してくれた。


 恵くんがもう一度指揮をとり、最初よりも手際よく、美しくお花を植えることができた。


「ふぅう……」


 私は花壇から少しはなれた場所に座る。ここ数日動きっぱなしで、へとへとだ。


 ……ピト。突然、頰に冷たい感触!


「ひゃわぁっ!」


 声をあげてふりむくと、恵くんが目を見開いていた! ジュースの缶をうしろから私の顔に当てたんだ。


「ごめん。そんなに驚くとは……」


 まゆげをへろっと垂らす恵くんは、私のとなりに腰かける。


「つくね。おつかれさま。それと……ありがとう」


「ん? なにが?」


「ぼくが竜巻の中にいたとき、つくねはぼくを助けてくれた」


 私が、恵くんを助けた? 逆じゃないのかな?


「つくねがケガをした瞬間、頭に血が上って……なにも考えられなくなった。あのままだったら、ぼくは学園をめちゃくちゃにしていた」


 そこで、恵くんは私をじっと見つめてくる。


「つくねの声が聞こえたから、ぼくは心を落ちつかせることができた」


「……えへへ! じゃあ、恵くんのための私になれたってことかな?」


 なんて言ってみたら、笑いとばしてくれると思った。でも、恵くんは真剣な顔をして……


「そうだね。つくねがいるから、ぼくがいる」


 そう、答えてくれた。


 ぼぉっ、と、ほっぺが熱くなる! はずかしくって、私は花壇の方を向く。


 色とりどりの花が、校舎にやってきた人を出むかえるように咲いている。


 赤っぽい明るい色、青っぽいさわやかな色、緑っぽい落ち着いた色……。ありとあらゆるお花が集まっているのに、ごちゃごちゃした感じはない。


「この花壇は、銀ヶ島学園をイメージしたんだ」


 恵くんが、ぽつりと言った。


「いろんな個性を持った生徒が、ここには集まっている。一輪ずつ特別なのはもちろんだけど、ひとつの家族として同じ場所にいるってことを、表現したかった」


「……うん。伝わってくるよ、恵くんの気持ち!」


 一輪ずつのお花をじっくり見ることも、ひとつの大きな花壇としてながめることも楽しい。集まってきたみんなの笑顔が、その証拠だ!


「竹鳥さん」


 横から私を呼んだのは……私を目の敵にして、足を引っかけてきた井島さん。


「ほら。きちんと言いなさい」


 うしろでは、七星さんが腕組みをしている。井島さんはしゅんとしながら、ゆっくり頭を下げた。


「あのときは……転ばせて、ごめんなさい」


「……許さない」


 私が言うと、井島さんは顔を上げる。いまにも、泣きそうな表情……。


「花壇の前で、いっしょに写真を撮ってくれなきゃ……許さないから!」


 ちょっとだけのイジワルに、井島さんは笑ってくれた。お返し、だよ!


「では、作業に関わった全員で撮影しましょう! りこ、出番ですわ!」


 と、七星さんはさっそく音頭を取る。


「恵くんは、真ん中だよ! ほら、行こ!」


 私は、恵くんの手を取って、ぐいっと引っぱる。


「そうだ、恵くん!」


 ナイショの話を、耳元で恵くんに伝える。


「この花壇、恵くんの好きな人にも届くといいね!」


「…………」


 恵くんは瞬きをしてから……私の手をにぎりかえした。


「どうだろう。ぼくの好きな人は……すっごく、鈍感だから」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る