威風堂々、正々堂々! 北斗七星の理事長道
土に穴を作る七星さんに、そぅっと近づく。
「ねぇ……七星さん」
「なんですの?」
手を止めることのない七星さんに、私は刺繍入りのハンカチを差しだす。
「えっと、この間はハンカチありがとう。洗いおわったから、返すね」
「あれくらい、学園の代表としては当然のことです。義を見てせざるは勇無きなり、ですわ」
ハンカチを受けとって、七星さんはスクッと立ちあがる。
「まちがっていることはまちがっていると、臆することなく言う。それができずに、この学園の生徒とは言えません」
「……それは私も賛成だけどさ。じゃあ、S組が存続することはまちがっているの?」
「えぇ。わたくしは学園のため、S組を解体するべきだと思っていますわ」
うっ。なんだか、にべもない。
「もっとも、これはわたくしの考えです。でも、竹鳥さんの考えはちがう。そうでしょう?」
「う、うん」
「ならば、正面から意見をぶつけあいましょう」
七星さんは私の目を見つめてくる。
「存分に言いあい、その分だけ考え、みんなで作りあげる。わたくしは理事長としてて、この学園をそういう場所にしていきたいのですわ」
その言葉にウソはない。だって、七星さんはS組を問答無用で解体することもできるはずなのに、私たちにチャンスをくれたんだ。
正々堂々。七星さんには、この言葉がだれより似合う。
そんな彼女に向きあうんだから、私も、だれよりまっすぐに!
「じゃあ、じゃあ! 七星さん、私の考えはね……!」
「竹鳥さん。いまは口より手を動かす時間ではなくて?」
「う。えぇと」
「わたくしが花を一輪植える間、あなたは土も掘りおこしていないですわよ?」
「ご……ごもっとも、です」
出鼻をくじかれてしまった……。
「……ふふっ」
「いま、笑った? 笑ったよね、七星さん?」
「笑ってなどいません。ほら、作業をしなさい!」
七星さんは顔をそらしてしまったけど、ほんのちょっぴり打ちとけられたのかな?
もどってきたら、また話かけてみよう。今度は、好きな食べ物とかどんな本を読むのかとか、そういうなんでもない話題がいいな。
花を取りに行く七星さんの背中を、私は目で追いかける。
歩く七星さんの……頭上。
植木鉢が、彼女めがけて落ちてきた。
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