タスク① 本校舎の花壇を完成させよ

運命を決める学園投票

タイムリミットは1ヶ月! 学園投票スタート!

「なんだか、大変なことになっちゃった……」


 はぁあ……と、ふかぁいため息。


「つくねのところにも、届いたかしら?」


 うしろからミハル姉がたずねてくる。いま、私の髪をとかしてくれている最中だ。


「うん。『学園投票アプリ』でしょ?」


 ポケットの中から、学園支給スマホを引っぱりだす。授業や生徒同士の連絡で使うスマホの中に、今朝からひとつのアプリが出てきた。


 タップすると、画面にふたつのボタンが表示される。


 赤い方には【解体】、青い方には【存続】と書かれている。


 このボタンについて、今朝の放送で七星さんから説明があった。


『今日から1ヶ月かけて、全校生徒2,000名で投票を行います。投票権はひとり1票、期間中であれば【存続】か【解体】か、意見を変えて構いません』


 そして、投票期間が終わった時点の結果によって、S組の命運が決定する! とのこと。


「私たちがいっしょにいられるのかどうかを、学園にいる全員で決める……」


 画面には、さっそく現時点の投票数が映しだされる。


【存続】……589票。【解体】……1,411票。


 私はもちろん【存続】のボタンを力いっぱい押したけど、解体するべき、と考えている人の方が倍以上だ。


 がっくり肩を落とすけど、ミハル姉は動じない。


「やるべきミッションが明確になったのは、いいことよ。S組存続のためのタスクは、学園のトラブルを解消させること。その働きで半数以上の生徒がS組存続を選んでくれたら、フィックスね」


「う、うん? ミッションにタスクで、フィックスだよねぇ……」


 つまり、私たちS組がいてくれてよかった! って、学園のみんなに思ってもらうってことだよね?


 それだけわかっていたら、迷わない。


 私は七星さんの言うとおりの「ザ・平均」で、みんなみたいな特別な力なんてないけど。


 みんなといっしょにいたい! この気持ちだけは、地球上のだれにも負けないってはっきり言える!


「はい、できた」


 ミハル姉は三つ編みおさげをカンペキに仕上げてくれた。私じゃこうはいかない。


「ありがと! それじゃあ、行こっか」


 私は意を決して立ちあがる。気分は、合戦前の戦国武将。


 学園指定のジャージを着て、首にはタオル。スポーツキャップ、軍手、スコップと、装備はカンペキ。ドアをガラッと開ける!


「いざ、第一の戦場……本校舎の花壇へ!」

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