S組解体命令!?

 離島そのものがひとつの学園になっている、銀ヶ島ぎんがじま


 最近建て替えられたピカピカの本校舎と、ひとりひと部屋の快適な寮は生徒に大人気。グラウンドや体育館、プールはもちろん、そびえる山も流れる川も、学園のうち。


 さらに、学校に関係する場所だけじゃない。商店街や駅まであって、遊園地だって建設中!


 入学から卒業までの間ではとても回りきれない、とウワサされる広大な。ここで、私たちは生活している。


 初等部から中等部まで、2,000人もの生徒がいる銀ヶ島学園には、みんなが過ごしやすいようにたくさんのルールがある。


 その中でいの一番に教えられて、全員が口をそろえて唱える決まりがある。


 それは……「旧校舎には近づくな!」


 私たちの家ともいえる旧校舎に、S組以外の人はぜったいに入らないように言われている。本校舎のみんなと旧校舎の私たちは、授業もテストも別々に受けているんだ。


 学年のちがう5人が同じ教室で、それぞれタブレットや学園支給のスマホで授業を受けているのはめずらしいのかもしれないけど……初等部からずっとのことだし、もう慣れちゃった。


 体育だって、ドッジボールが試合開始からふたり対ふたり(ひとりは審判)のクライマックスになるだけのことだ。外野を入れたら一騎打ちになって、さらに盛り上がる!


 なにより、気の合うみんなと毎日いっしょにいられる。それに勝る幸せなんて、私にはない。


 朝食を食べおわって、最初の授業まであと5分。準備をしていると……タブレットの画面が、突然点いた!


『生徒会長より、S組のみなさんへ緊急配信です』


「わ! いきなり、なに……?」


 周りを見ると、みんなも同じ状況みたいだ。


 映しだされた画面には、本校舎の教室とひとりの女の子が映しだされた。


『朝から突然の配信、失礼しますわ。ごきげんよう、S組のみなさん。わたくしのことはご存知ですか?』


 女の子がスカートの端をつまんで、ぺこりと礼をすると、くるりくるりと念入りにカールさせた金色の髪がゆれる。


 さらに彼女は、左腕に『銀ヶ島学園生徒会長』と書かれた赤い腕章を着けている。


「よく知っているわ。中等部1年A組、北斗ほくと七星ななせさん」


 私のひとつうしろの席に座るミハル姉が答えた。


「銀ヶ島学園理事長のお孫さんで、1年生ながら生徒会選挙では90%以上の生徒に支持されて当選した生徒会長……でしょう?」


 こちらの声が聞こえているみたいで、七星さんは満足そうに笑ってから、首を横にふる。


『生徒会長だけではありません。私は今日から、学園理事長代理ですわ!』


 右の席の樹ちゃんが、私の袖をひっぱった。


「リジチョウダイリ? なにそれ? セイトカイチョーが進化でもしたの?」


「ええっと、生徒会長さんは生徒の代表で、理事長さんは……んん? なんだろ?」


 私が首をかしげていると、左どなりの恵くんが耳打ちをしてくれる。


「理事長っていうのは、ここをどんな学園にするのかを決める人のこと。そして、その代わりを任された人が、代理、だよ」


「つまり、学園で一番えらい人ってこと?」


「かんたんに言えば、そうだね」


 すごいなぁ。私と同い年なのに、生徒会長で理事長代理……。


『おじいさま……前理事長は、体調が優れず、今月から療養に入られました。後任を選ぶまでの間ですが、わたくしは直々に理事長権限をたくされましたの』


「で? その理事長代理サマが、なんの用だよ」


 太陽が教室の一番うしろの席で、ぶっきらぼうにたずねる。


『はい。これはS組に関しての、重要なお知らせです』


 そう前置きをしてから、七星さんは高らかに宣言した。


『銀ヶ島学園理事長の名の下に、S組を解体します!』

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