説明って大事だね

ゲームをスタートすると、目の前に噴水のある街並みが現れた。

それと同時に



最初の町~サウザンライフ~



というナレーションが流れた。


えっと、勝と透は……あ、あれか!


「おーい、勝! 透! 遅れた悪かったな!」


まわりを見ると噴水の周りに事前に教えてもらっていたキャラがいた。


勝は青髪にフードを被った付与魔術師(エンチャンター)。

透は金髪にスピード、攻撃力特化の盗賊(シーフ)。


俺ら3人でパーティーを組むことにしているからな。

透が主にアタッカーとなり、俺が守る、そしてそれを勝が付与エンチャントでサポート。


うん、結構いいんじゃないか?


俺がそんなことを思い、話しかけたが俺の予想と違った言葉が返ってきた。

二人は互いに向き合って


「え? おい、透。お前この子知ってるか?」


「いいや? お前は……ってお前から聞いてきたのにお前の知り合いなわけないか」


「あぁ、ということで人違いじゃないですかね」


「は? いや何言ってるんだ? 俺だよ俺、海樹だよ」


「海樹? なんであいつのこと知ってるんですか? ま、まさか……か、彼女? クッソ! こんなかわいい子と! いやゲームだしわからないか」


は? 彼女?

俺が……?


「いやいやそんなわけ……」


ここで俺は気づいた。

いつもは顔を前に向けて話していたのに今は見上げて話していること……


風邪をひいているわけでもないのに声が異様に高いことに……


そして恐る恐る噴水の水を見てみると、そこには


「嘘……だろ……?」


蒼銀色ともいえる青みがかった髪を持つ、少し幼い顔を持ち、スタイルはモデル顔負けの究極の美少女ともいえる女の子の姿があった。




____________





「で、なんでお前はそんな姿になあっているんだ?」


「そうそう、なんでそんな美少女になってるんだよ」


いや……そんなこと俺に言われても……

逆に俺の方が知りたいくらいだよ!


ん?


なんでこいつらが俺だってわかってるのかって?


それは俺しか知らないこいつらの黒歴史を暴露したからだ。

まぁ、その内容はこいつらの名誉のために黙っておこう。


「なにかないのか? そんな姿になったきっかけとか覚えないのか?」


「うーむ、まああるといえばある」


「へぇ、それはどんなやつなんだ?」


「えーとまず俺の種族がランダムでユニークになって……」


俺がそういうと二人は固まった。


「は?」


「へ?」


「えー,それでそのあとに……」


「いやいやちょっと待って。ゆ、ユニーク? ユニーク種族?」


俺はその勝の問いにこくりとうなずく。


「嘘……マジで? ユニーク種族? マジで?」


あ、うん。

驚くよな、勝。

てか透さん?

獲物を見つけたみたいに目をキラキラするのをやめてくれません?


「勝……この新しいもの大好きなこいつをどうにかしてくれ……頼む……」


「!? おい! 透、正気を取り戻せ!」


「は!? 危なかった、正気を失うところだった……」


いや、もうすでに正気を失っていた気が……

いや、それはいったん置いておくか。


「それで最後のキャラクリのときに固有のキャラクターデザインがあるとかシステムが聞いてきてな。その時に防御に補正が入るからとか何か……詳しくは急いでたからわからないけど……って、どうした勝?」


俺がそこまで言うと勝が頭を抱えていた。


「え、なに? どうかした?」


「はぁぁぁ、お前さぁ」


え、何?

どゆこと? 俺何かやってたの?


「キャラクターには性別があるだろ?」


「あぁ」


「このゲームはな、性別によって補正が入るんだよ」


へぇ、そうなのか……ん?


「ってことは……!」


「防御に補正が入るのは女性だ……」


今日、俺は人生の中で一番驚いた回数が多いだろうと確信した。


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