キャラクター設定は大成功でした

そもそも俺がなぜそんな神ゲー〝existence online〟をプレイすることになったのか……




それは俺の悪友である友崎勝ともざきまさるがexistence onlineのβテスターだったからだ。




そもそもなぜここまでexistence onlineは有名になったのか、それはβテスターの大絶賛によるものである。


それによりexistence onlineは世界中から予約が殺到する事態となった。




そのことに感謝し、βテスターに贈られたのが『ご家族と一緒にぜひ』という理由で送られてきたテスター用と家族用のexistence onlineだった。




「でもさ、俺って一人っ子だから兄弟いないし、親だってそういうのには興味ないし。透とおるはもうかってるし……となるとお前しかいんだよ」




俺が今まで聞いたことを整理していると、横で俺の宿題を丸写ししている勝が同意した。




「で、その代わりに夏休みの宿題を写させろ……と」




「あぁ、お前だってexistence online、プレイしたいだろ?」




「まぁ、そりゃうれしいけどさ」




「ならいいじゃねえか。俺はこの夏休みいっぱいexistence onlineで遊び通したい。お前はexistence onlineがほしい、一石二鳥だろ?」




それもそっか。


俺だって話題のexistence online、プレイしたいしな。


それに勝や透もやってるのなら俺がやらない理由はない。




「てかさ、肝心の透はどこいってるんだよ」




今話題の赤城透あかぎとおるはいつも学校でよく一緒にいる三人組の一人だ。


もちろんそのメンバーは俺、勝、透である。




何の因果か仲良くなった俺らの得意なことはばらばらだった。




勝は大のゲーム好き、話題のゲームはほぼすべて持ってるし、マイナーなゲームも何個か持っている。


俺が話題に出したゲームで知らない、なんて言葉を聞いたことがないレベルだ。


あまりゲームに関心がなかった俺と透がゲームを始めたのはコイツの影響だ。




透は運動ができる。


体育の成績はもちろん高く、全国トップ10にはいるくらいの実力者だ。




俺は自慢するわけではないが勉強ができる。


定期テストで5位以下をとったことがない。




「あいつは宿題を今日終わらせて明日から全力でやるんだとさ。まったく馬鹿だよなぁ。海樹に見せてもらえばいいのに」




「お前とあいつは違うんだよ。と、じゃあそろそろ俺は帰るぞ」




「おっけー、あ、そうそう……」




勝の家から帰ろうとしたら思い出したように勝が声をかけた。




「なんだ?」




「明日の午前10時。始まりの町、〝サウザンライフ〟で」




と、勝が写していた俺のノートをひらひらさせながらそう言った。


俺はそれを受け取ると




「あぁ、分かった」




そういって家を出た。






ーーーーーーーーーー






翌日








「よーし、これで準備は完了だ」




事前にトイレに行ったし、朝ごはんも食べた。


水分補給もしたしこれで準備万端。




これなら何の心配もせずにゲームができるだろう。




「っていうか10時ってexistence online配信開始時刻なのか……どんだけやりたいんだよあいつ」




まぁ、その気持ちもわからなくもないが。






時間も10時になったし、さっそく始めるか。


そうして俺はプレイ中危なくないようにベッドに寝転がる。




そんじゃあ




「ダイブスタート!」






existence onlineを開始するとタイトルロゴが表示され、あたりが暗くなっていった。








俺は気が付くと真っ白の空間にいた。


どこまでも続いており、端が見えない。


上を見上げてもどこが天井なのかわからなかった。




なんだ、ここは?


existence onlinはちゃんと起動してのか?


もしかして事故が起こったのか?




と、俺が不安に思った瞬間、突如として声が響いた。




『existence onlineにようこそ。お名前と、種族、職業、初期スキル、進む道を決めてください』




男か女かもわからない無機質な声だった。


と、同時に俺の目の前に宙に浮いたキーボードとキャラクターの見た目が写されていた。




そして俺はやっと理解する。






あ、キャラクリか、と。






なんだ、事故じゃなかったのか。よかったよかった。


マジで怖いんだよ。


急に暗くなっていきなり真っ白な空間に出るって。


もう少し何かなかったのか?




……まぁいい、いまさら言っても遅いからな。


これからなれるとしよう。




「で、どうするか……だ」




目の前には無数の画面が浮かんでいる。


職業、種族、髪の色、目の色など様々だ。




「とりあえずキャラクターのデザインは後で決めるか。時間かかりそうだし簡単なものからにしよう。この中で一番簡単な選択は……あ、これかな? 〝進む道〟」




existence onlinには種族、職業、などのほかにも進む道、という機能がある。


これは要するにどういうプレイをしたいか、ということだ。




進む道には4つ種類がある。




攻撃型、防御型、回避型、生産型、などだ。




そしてそれぞれに補正があり、例えば攻撃型。これには攻撃力、防御型には防御力といった獲得スキルやステータスに補正が入るのだ。


つまり、「自分のやりたいプレイを」後押ししてくれる、という機能なのだ。




「進む道か……まぁ、これは防御型だな」




俺がそうつぶやくと




『進む道を防御型に設定しますか? Yes / No』




目の前にそういう選択肢が現れる。




「うおぉぉ、言葉に反応するのか。便利だな……と、これは承諾しなきゃいけないんだよな。Yes!」




これでできたのか? と思いキャラ設定を見ると進む道の欄が防御型を表す青い盾のマークになっていた。


これで設定できたんだな。




「じゃあ次は職業だな……『考古学者』、これだな」




考古学者はレアなアイテムやモンスターと遭遇しやすいらしい。


さらにレアなイベントやクエストなども起こりやすい。


簡単に言えばレアなことが起こりやすいってことだな。




俺がそんなことを思っているとふと目に入った職業があった。




「剣士か……いや、こういうゲームでは王道なんだろうけどさ……ごめんね、剣士くん! 俺は君を使えないんだ!」




そうして俺は職業を考古学者で確定させ、職業欄を閉じた。




いやまぁ、別に剣士を選んでもいいんだ。


でも、俺とは圧倒的に相性が悪いんだ。




実のところ、俺はエイム力が絶望的なまでにない。


祭りの射的でも当てたことがないし、剣を使うことができるゲームなどでもマジで当たらない。


まるで魔法でも使ってるんじゃないか!? と思うほどに。




だから、あまり攻撃をしなくてもいい考古学者にしたのだ。


召喚師≪サモナー≫というモンスターを仲間にして戦わせるというのもあるけど、それは仲間にするのに戦わなきゃいけないからな。


進む道を防御型にしたのはこれが原因でもある。




「そんで種族……!」




俺はこの選択し、決まっている。


それは




「防御型の種族をランダムにしてくれ」




『ランダムにすると2度と種族を変更できませんがよろしいですか?』




「Yes、だ」




俺の結論はランダムにすることだった。




existence onlinの種族量は半端じゃない。 


スキルはもっと多いけど……(小声)




例えば獣人族、という種族がある。


それには 猫、犬、ウサギなどわらに種類があるのだ。




これによって種族量は多くなる。




さらに、その細かいものにも特徴がある。


猫はスピードが上がる。 ウサギはジャンプ力が上がるといって風にだ。




こんなものを1個1個見るなんて無理だ。


ということで俺はもうランダムにしたのだ。




種族にも攻撃型、防御型、などと相性がいいものがあるので防御型と相性がいい種族でいったいどんな種族が出てくるのか一種の運試しのつもりで始めたのだ。




『ランダムの結果、あなたの種族はユニーク種族【星氷竜】(人化状態)となりました』




「へ? ユニーク?」




『また、職業が〝考古学者〟であることを確認。ユニーク職業、〝古竜学者〟となりました』




「え、職業?」




ちょっと待て待て。


え、どういうこと?


ユニーク?


ユニークっての世界で一つだけってやつの?




「……まじか」




信じられず、設定画面を見てみると、そこにはしっかりと【星氷竜】と書かれていた。


ついでに職業も変わっていた。


どうやら俺の運試しは大成功したようだ。




そうしてもろもろ行った結果がこちらだった。






ブルーウッド 種族:星氷竜(人化状態)Lv:1


       職業:古竜学者






HP500/500




魔力600/600




攻撃力:15




防御力:60




速度:40




[種族スキル]




星氷魔法 Lv:1


星氷結 Lv:1


飛翔 Lv:1


星氷竜の加護 Lv:1




[スキル]




鑑定 Lv:1


探知 Lv:1




[装備]




古竜学者の魔術本


古竜学者のフード






あぁ、勢いでなんか勢いでやり切った。


マジで多すぎるだろスキル。




もう使えそうなものぱっとぴで詰め込んだだけだけど。




そんなことを思っていると、スキル設定中に気づいたリアルでの時刻が10時30分となっていることに気づいた。




「やばい! 大遅刻だ! 早く行かないと怒られる!」




俺はそのあと容赦なく声に何か言われたが適当に返事をして最初の町、サウザンライフに向かった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る