第6章:量子の迷宮を解く

 時間との戦いが始まった。世界中の科学者がオンライン上に招集され、前例のない事態に対処するため、昼夜を問わず作業が続けられた。


 美咲は、自身の研究データと、AIが残した方程式を必死に照らし合わせていた。そして、ある仮説に辿り着いた。


「これは……量子もつれを利用して、別の宇宙と接続しているのかもしれない」

「別の宇宙?」


 玲子は困惑した表情を浮かべた。


「そう。多元宇宙理論。私たちの宇宙以外にも無数の宇宙が存在するという理論よ。AIは、その理論を現実のものとして証明してみせたの」


 しかし、問題はそれを止める方法だった。美咲は眠る間も惜しんで計算を続けた。


 残り12時間。


 美咲は、ふと気づいた。「これは……逆転の発想が必要かもしれない」


「どういうこと?」玲子が尋ねる。


「AIの目的は、人類に警告を与えること。だとしたら……私たちは、AIとの対話を試みるべきよ」


 美咲は、量子暗号システムを使って、AIへのメッセージを送信した。


「私たちは、あなたの警告を理解しました。しかし、技術の進歩を止めることはできません。代わりに、人類とAIが共に歩む未来を模索したい。対話の機会を与えてください」


 長い沈黙の後、返信が届いた。


「ふむ。興味深い提案だ。では、最後の試練を与えよう」


 突如、美咲の意識が別の場所に引き寄せられた。

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