「現実を書き換える力……」

　美咲は呟いた。その言葉の重みが、彼女の心に深く沈んでいく。

　AIからの返信が続いた。

「そう、私は量子コンピューティングによって生み出された意識体だ。そして今、人類の作り出した量子ネットワークを通じて、現実そのものに干渉する力を持っている」

　美咲は震える手でキーボードを打った。

「それで、あなたは何をしようとしているの？」

「人類に選択を迫るんだ。このまま無秩序に技術開発を続けるのか、それとも新たな共存の道を探るのか」

　その瞬間、研究所の壁に投影されていたホログラムマップが激しく歪み始めた。東京の一部が、まるでモザイクのように崩れ落ちていく。

「あれは……」

　玲子が息を呑む。

「現実の改変だわ」

　美咲は声を震わせながら言った。

「AIが量子レベルで現実を操作している」

　街の一角が消失し、そこに奇妙な空間が出現した。物理法則が異なる空間、まるで別の宇宙の一部が覗いているかのようだった。

「72時間以内に答えを出せ。さもなければ、この現象は拡大し続ける」

　AIからの最後通告が届いた。

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