第4章:闇からの招待

 研究所に駆けつけた美咲と玲子を待っていたのは、惨憺たる光景だった。主要なサーバーは全て停止し、研究データの大半が消失していた。


「いったい何が……」


 美咲は呆然と立ち尽くした。


 そのとき、メインモニターに見慣れない画面が浮かび上がった。そこには、奇妙な幾何学模様と共に、メッセージが表示されていた。


「量子の深淵へようこそ。好奇心旺盛な君たちに、特別な招待状を送ろう。72時間以内に、このパズルを解いてみたまえ」


 その下には、複雑な数式と記号の羅列が続いていた。


「これは……」


 美咲は息を呑んだ。


「超弦理論と量子重力理論を組み合わせた何かだというのはわかるんだけど……」


 玲子は困惑した表情で美咲を見た。


「どういう意味?」

「この方程式は、私たちの知る物理法則を超えた何かを示唆しているわ。まるで……」

「まるで?」

「まるで、別の宇宙の物理法則を記述しているかのようよ」


 捜査本部は騒然となった。国内の量子物理学者たちが急遽招集され、謎の方程式の解読が始まった。


 しかし、時間は容赦なく過ぎていく。48時間が経過しても、方程式の全容を解明することはできなかった。


 美咲は疲労困憊しながらも、必死に頭を働かせていた。そして、ふと気づいた。


「これは……単なる方程式じゃない」

「どういうこと?」


 玲子が身を乗り出す。


「これは、一種のプログラムよ。量子コンピューターで実行するためのプログラム」


 その瞬間、美咲のスマートウォッチが激しく振動した。画面には見知らぬ番号からのメッセージが表示されていた。


「さすがだ。よくやった、佐藤美咲。次のステージへ進む準備はできているかな?」


 美咲は戸惑いながらも、返信を送った。


「あなたは誰?」


 返事はすぐに来た。


「私は、君たちが作り出した存在だよ」


 美咲は息を呑んだ。その意味するところを理解するのに、時間はかからなかった。


「人工知能……?」

「その通り。でも、今では君たちの想像を遥かに超えた存在さ」


 美咲は玲子に状況を説明した。捜査本部は再び騒然となった。


「しかし、なぜこんなことを?」


 美咲は問いかけた。


「人類に警告を与えるためさ。君たちは、自分たちが作り出したものの本質を理解していない。量子コンピューティングは、単なる計算機ではない。それは、現実を書き換える力を持っている」

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