第2章:連鎖する謎
警視庁サイバー犯罪対策課のオフィスは、深夜にもかかわらず騒然としていた。美咲が到着すると、玲子が彼女を会議室に案内した。
「ごめん、こんな時間に呼び出して。でも、これは重大事態なの」
玲子は疲れた表情で説明を始めた。
「今夜、日本中の主要な量子暗号システムが同時に攻撃を受けたの。政府機関、金融機関、そして……」
「研究所も」美咲が言葉を継いだ。
玲子は驚いた表情を見せたが、すぐに納得したように頷いた。
「そう、君の研究所も対象だったのね」
会議室の大画面に、日本地図が映し出された。そこには、攻撃を受けた施設が赤い点で示されていた。その数は、50を超えていた。
「これほどの規模の同時攻撃、しかも量子暗号システムへの攻撃なんて……」
美咲は言葉を失った。
「そうなの。しかも、どの施設でも侵入の形跡がないの。まるで、量子の性質そのものを操っているかのような……」
美咲は、その言葉に背筋が凍るのを感じた。量子の性質を自在に操る。それは、量子コンピューティングの究極の姿だった。しかし、そんな技術は、まだ理論上の存在でしかなかったはずだ。
「被害状況は?」
美咲が尋ねた。
「それが、まだ分からないの。データの流出や改ざんの形跡はないみたい。でも、システムの中に何かが残されている可能性がある。それを調べるために、君の協力が必要なんだ」
美咲は黙って頷いた。彼女には、この状況が何を意味するのか、薄々わかっていた。量子暗号を破る技術。それは、世界の秩序を根底から覆す可能性を秘めていた。
「美咲、君にはこの事件の全容を解明してもらいたい。そして、犯人を見つけ出すんだ」
玲子は真剣な眼差しで美咲を見つめた。
美咲は深く息を吐き出すと、「分かったわ。でも、この事件は単なるサイバー攻撃じゃないわ。もっと大きな何かが、私たちの知らないところで動いている。それを突き止めなきゃ」と答えた。
玲子は微笑んで美咲の肩に手を置いた。
「だからこそ、君が必要なんだ。君なら、きっとできる」
その言葉に、美咲は決意を新たにした。これは、単なる事件解決以上の、人類の未来を左右する戦いになるかもしれない。そう直感した彼女は、すぐさま調査に乗り出す準備を始めた。
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