第2話 遊覧飛行

昨日貰った食料を調理して腹を満たした後、魔力バッテリーを後部に搭載した。魔力バッテリーは魔力炉から生成される魔力素を高密度で貯蔵できる大変便利なものだ。魔力素は様々なエネルギーに自在に変えることが出来るため、このエネルギーを液状にして、エネルギー量を調整すればヘリの燃料として使える大変便利な優れものだ。このバッテリー個でこのヘリを2回満載にすることが出来る。今回はそれを上限の二つまで搭載している。正方形の形をしたこのバッテリーは重量が一個60㎏程と大変重い。何とかこれを乗せ、100Lのポリタンクも載せて離陸し、アルガストに向かった。今日は曇りの為、雲の中に入らないように高度を下げながら飛行した。そして昨日と同じ時間にアルガストに着陸した。昨日帰り際にメモを渡したが、彼らはそれ通りにヘリパッドの位置を書いてくれた。そしてヘリパッドの横にはテントが並んでいた。エンジンをカットし、機体を降りるとレーベルさんとジャクソンさんが待っていた。

「流殿、約束通り来てくださるとは。」

「ええ、今日は拠点にするために必要なものを持ってきました。重いので降ろすのを手伝っていただけませんか。」

「勿論です。ジャクソン。」

「分かりました。皆運ぶぞ。」

私は左側の後部扉を開いてジャクソンさんたちに魔力バッテリーとポリタンクを運んでもらった。

「これはなんですか?」

「この重いのがこの従魔の栄養です。そしてそれを一度このタンクで液状にしてから従魔に入れます。」

「そのようなものを初めて見ました。それで今日はこれからどうされますか?」

「今日はあいにくの天気ではありますが、レーベルさんを遊覧飛行にご招待しようかと思います。」

「遊覧飛行、つまり空を飛べるということか。」

「その通りです。」

「やったー!わしが生きている間に鳥と同じように空を飛べるとは!なんと嬉しいことか。」

レーベルさんはとてもノリノリで飛び跳ねている。それをジャクソンさんは困り顔で見ている。

「それでは早速離陸しましょう。3人まで搭乗可能です。中は狭いので鎧などの重量物、武器等は外してください。」

「ジャクソン、行くぞ。」

「はい。」

「ジャクソンさんは後ろの席にお願いします。レーベルさんは私の左側にお願いします。」

「うむ。」

それからチェックリストをこなして、エンジンスタートした。

「それでは飛びます。」

コレクティブをゆっくりと引いてホバリングを開始し、向きを変えて上昇に入った。3回目ということで私も大分慣れてきた。

「ジョンソン見ろ、アルガストがどんどん小さくなってゆく。」

「これは素晴らしい。」

「アルガストの街を一周してから少し海に出ます。」

「うむ。」

アルガストの街を一周してから海の方に進路を変え、一気に最高速度付近まで加速した。

「結構早く動いているのだな。今どれくらいの速さなのだ?」

「今の速度は130kt、馬車の10倍以上の速さで移動しています。」

「何と!その速さなら。馬車で10日かかる王都まで一日で着いてしまうではないか!ジャクソン、どう思う。」

「驚異の一言に尽きます。このような従魔が世界にはあったのかと驚くばかりです。」

反応は上々だ。

「これは正式にはヘリコプター、回転翼機というのですが、人と設備が整えばより大きくてより速いものを使えます。また滑走路と一直線のとても太い道を作れば今の4倍以上の速さでより多くの物を運べるようになります。それこそ世界中のあらゆる場所に一日以内に行くことが出来るようになります。」

「これよりも更に速いだと!?それは人と設備があれば出来るんだな。ならばわしが精いっぱいの支援をしよう。必要なものは何でも言ってくれ。」

こうして支援を取り次ぐことに成功し、充分すぎるほどの成果を得て戻ってきた。

「本当に楽しかった。それでどんな支援が必要かね。」

「私以外にこれを操れる人が要ります。それに地上でこれに燃料を入れる人、警備してくれる人が必要です。」

「分かった。この場所は我々商会から人を出そう。ちなみにそなたの家でも人手が足りないのか。」

「家の住民は私だけですのでそちらも足りていないですね。出来れば奴隷が欲しいです。」

「そうか、どんな奴隷を希望するのか?」

「我々と同じような背丈であれば問題ありません。」

「条件はそんなものなのか。ふむ、すぐに奴隷を用意しよう。ヘリコプターには最大三人までしか乗れないだろう。今日のところは三人まで用意しよう。奴隷は自由に選んで貰って良い。付いてきてくれ。」

私はレーベルさんの馬車に乗ってアルガストの街の中に入った。そして奴隷商館という建物に入った。

「いらっしゃいませ。これはこれはレーベル様とお連れ様、本日はどのような奴隷をご所望でしょうか。」

「スレイバーよ、こちらは私の客人の南雲殿でな、是非最高の奴隷をお願いしたい。代金は全て私につけてくれ。」

「かしこまりました。それでは南雲様、こちらにどうぞ。」

私は重厚な扉を抜けて奥へと案内された。

「こちらはいかがでしょうか。」

真っ白な肌のエルフを紹介された。胸も大きくすらっとしていて神々しい。

「流石にものすごい値段なのではないですか?」

「そうですね。白金貨一枚ですね。」

無限の知識によるとこの世界では白金貨1枚が10大金貨であり、100金貨であり、1,000大銀貨であり、10,000銀貨であり、100,000大銅貨であり、1,000,000銅貨である。銅貨1枚100円くらいの価値だから平気で1億ぐらいはする計算になる。流石に高すぎると思った。

「流石に高すぎます。」

「しかしご安心ください。代金はレーベル殿がお支払いになります。このような機会はめったにありませんよ。」

「私があくまで必要なのは美貌ではなく、一緒に働く仲間として信頼できる奴隷です。」

「そうですか。ここまで欲がないのは珍しい。めったにおりませんよ。奴隷を持つことには皆憧れがあり、邪な考えで欲に眩む者しかおりません。是非今後とも仲良くさせていただきたいと考えております。それでは次に行きましょうか。」

そして猫獣人の女の子や筋肉隆々のドワーフ族を紹介され、買うことにした。代金はなぜか教えてくれなかった。

「それではこちらで契約を結びます。」

それから一人ずつ順番に血を石板に垂らして奴隷契約を行った。彼等の右腕に紋章が現れた。そして3人目ということで先ほどのエルフが目の前に立った。

「スレイバーさん、こちらのエルフは間違いではないのでしょうか。」

「いえ、間違いありません。こちらのエルフと契約を結んでいただくのは決定事項にございます。」

「どういうことですか?」

「こちらのエルフは既にレーベルさんからお代を頂いております。レーベル様はあなたにならこのエルフを任せられると仰せです。お嫌でなければ受け取ってください。」

そして悩んだが流れに流されるまま契約を結び、3人の奴隷を手に入れた。エルフの名前はエリス、猫獣人の名前はミア、ドワーフの名前はオズロにした。

「おお、しっかりと奴隷を選ばれたようですな。」

「レーベルさん、こんなに色々として貰ってありがとうございます。」

「礼に及ぶほどのことではない。南雲殿はこれからまた家に戻られるのかな。」

「そうさせていただきます。」

そしてレーベルさんの馬車に乗ってヘリのところまで戻ってきた。それから給油を済ませ、離陸した。レーベルさんが食料品をたくさんくれた。更に植物の種までくれた。本当に至れり尽くせりで恐縮だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

スキル物流、無限の知識で夢想します 武器は美しい @djdjrjjdjfjfj

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ