スキル物流、無限の知識で夢想します

武器は美しい

第1話 転生

私は異世界に転生した。神様からもらったのは物流に関するものを召喚できる力となんでも知っている無限の知識、魔力炉だ。私が転生して最初に降り立ったのは一つの島だった。それは非常に平坦な島である。この島は神様が私にくださった島であり、自由に開発できる。神様から前世で予定外の死を迎えさせてしまったことに対する謝罪であり、私はそれをありがたく使わせてもらうことにした。物を運んで貢献したい私が選んだのをスキル物流、そして生きるのに困らないように、前世の世界の知識とこの異世界の知識を手に入れられるスキルである。神様が気を利かせてくれたので魔力炉をくれた。この世界のあらゆる事物は魔力素によって動いているらしく、魔力炉はその魔力素を無限に生成してくれる優れものだ。この島限定ではあるが、それを召喚できるようにしてくれたのは大変ありがたい。

神様によるとこの島は直径が10km程の円形の島らしい。遠浅の海岸があり、遠浅の範囲内であれば豊かな漁場であるらしい。そして大陸からは200㎞程離れており、潮の流れが激しく、嵐が起こりやすいため、この世界の人たちはめったに足を踏み入れない場所らしい。この島の周辺だけは神様のお陰で年がら年中穏やかだそうだ。それに21世紀の技術力を以てすれば大抵は大丈夫と言われている。

島の南側にヘリパッドと格納庫、そして魔力炉を召喚した。格納庫には過眠用のスペースやいくらかの食材があった。しかし、この島にずっと留まっていたら野垂れ死んでしまう。幸いにも格納庫の中にあった蛇口から水が出て、コンロには火がちゃんと付くのでひとまずは備品を使って腹を満たすことが出来た。まだ明け方なので、無限の知識で仕入れたアルガストという港街までヘリで飛行することにした。ヘリはロビンソンR66を召喚した。航続距離は約600㎞だから燃料を満載にすれば十分往復できるだろう。スキルのお陰で不慣れではあるがやることは全て分かっている。サイクリックをコレクティブをしっかりと握り、コレクティブをゆっくりと引きながらアンチトルクペダルで機体がメインローターの回転方向に引っ張られないように気をつけながら離陸した。初めてではあるが、機体はゆっくりと上昇し、40-50ktに順調に加速しながらアルガストへ向けて西に進路を取った。天気は快晴で高度1500ftで順調に飛行した。丸型の風防越しにすごく綺麗は透き通った大海原が見えた。人生初めてのフライトは決して忘れられないものになりそうだ。

離陸してから一時間ちょっと、ついに機体は目的地アルガスト上空に入った。とてもではないが街に着陸が出来るようなスペースはない。街の外に広がる平原に着陸出来そうな場所を見つけ、人生初めての着陸にチャレンジした。着陸地点を見定めてからゆっくりと近づき、ホバリングに入るが非常に繊細で神経をすり減らした。それから少し強めの着地をしてしまった。コレクティブを早く下げすぎたのが原因だろう。コレクティブを完全に下げ、エンジンをカットして降り立った。快晴であり、朝の時間ということもあって非常に多くの人に目撃されていた。機体から降りて、機体にいくつかカバーをかけると近づいてきた人に話かけられた。

「あんた見慣れない恰好してるな。どこから来たんだ?」

「西の方から来たんだ。」

「西の方から、、、どおりでこのあたりでは見ない恰好をしているのか。それでこれは何なんだ。」

そう聞かれて、ヘリコプターと言っても理解されないし、どう言おうか。無限の知識の中に従魔というのがあった。それを使おう。

「これは僕の従魔だよ。」

「へー、これはすごい従魔だな。西の方には従魔がいるのか。これは興味深い、是非ボスに見て貰わなければ。、、、すまない。独り言が出た。申し遅れたが私はアルガスト商会護衛団団長のジャクソンだ。是非ボスにお会いしていただきたい。」

アルガスト商会、、無限の知識によるとこの地域で最も力のある商会らしい。知識上は問題なさそうだ。

「分かりました。しかし、この従魔は歩くことが出来ないのでここから離れることが出来ません。」

「それについては心配いりません。これからボスを呼んでくるのでしばしお待ちください。」

ジャクソンさんは軽く一礼してから猛スピードで街の門に向けて走って行った。異世界人はすごく身体能力が高いのだと感心した。機体の周りが芝になっているのでそこでしばらく寝そべっていると一台の馬車と馬に乗った騎士らしき甲冑を身に着けた集団がこちらに向かってきた。全員が武器を持っているので身の危険を感じ、カバーを大急ぎで取り外し、チェックリストに従って機体を起こし、エンジンをスタートさせた。先頭の馬が集団から外れて一目散にこちらに向かってきた。

「従魔使い殿、我らがアルガスト商会の商会長を連れてきました。是非会ってください。」

エンジンスタートしてローターが回っているにも関わらずこんな遠くから声を届けられるとは本当に異世界人は化けものだ。そして少しすると、

他の馬に乗った騎士たちは止まり、馬車とジャクソンだけがこちらに向かってきた。ジャクソンも後ろから追っていた騎士に何かを渡して単身で向かってきた。

「従魔使い殿、我々に敵意はありません。武器は全部置いてきました。どうかお願いします。」

私は彼と馬車が目の前に来た時にエンジンを切り、機外に出た。まず近づいてきたのは馬車に乗っていた初老の男だった。

「私アルガスト商会の商会長を務めておりますレーベル=アルガストと申します。街の騎士たちは我々で抑えてありますのでご安心ください。」

「分かりました。私は南雲と申します。」

「早速で申し訳ないのですがこれは実に興味深い従魔ですな。朝見ましたぞ。空も飛べるようですな。」

「ええ、これは空を飛ぶことが出来る従魔です。」

「やはりそうであったか。これは素晴らしい!空を飛べれば盗賊にあうこともなく、安全にビジネスが出来る。金はいくらでも出す!どうか我々に売ってはくれないだろうか?」

「それは出来ません。これは私が家に帰るために絶対に必要な従魔です。第一にこれをあなたが買ったところで乗る事は出来ません。」

「そうか。だがこれはどうしても欲しい、どうすれば良いのだ、、、」

レーベルさんは明らかにガックリとうなだれてしまった。彼が嘘をついていないのは分かっているが流石に手放すことは出来ない。だが、ここでアルガスト商会と強い関係を作れば安心して生活できるようになるのも確かだ。ならばこちらも一つ提案をしてみよう。

「レーベルさんは、私の従魔を使って物を運ぶのが目的でしょうか。」

「無論そうだ。」

「でしたら私が商会の荷物をこの従魔で運べば良いのではないでしょうか。」

「確かに南雲殿しか使役出来ないのであればそれしか方法はない。ならばそうしよう。報酬は何を望む?」

「こちらで安心して生活できる権利と、食料品です。それと現状私の家とここを往復するのが精いっぱいです。ですのでこちらにもこの従魔のための拠点を構築する為に広い土地を確保する必要があります。」

「求めるものはそれだけか。実に欲のない男だ。良いだろう。全て取り計らおう。では手付金と、少しではあるが今用意できる食料品だ。」

かなりずっしりとした袋と緑野菜と穀物が入った袋をもらった。

「ありがとうございます。では家から拠点構築に必要なものを持ってきます。明日の朝にまたここに戻ります。」

「そうか。」

私は機体の後部に貰ったものを詰め込んでエンジンをスタートさせ、空に舞い上がった。騎士たちはあっけに取られた顔でこちらを見ている。ジャクソンさんとレーベルさんは黙ってこちらを見ていた。

「ボス、本当にこのまま帰してしまってよかったのでしょうか?」

「わしには彼が嘘をついていないことが分かっておった。彼は時代を変えるかもしれん。早速彼が指示したようにここにあの文字のようなものを書いてくれ。」

騎士たちはヘリの降り立った場所に大きくHとそれを囲む大きな円を地面に書き始めた。

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