測量業(個人社長編)

ある親子経営の測量会社にお世話になることになった。


そこは、僕が4度お世話になった、あの測量会社の元社員が独立し、社長を務めている会社だった。

社長のことを、僕は親方と呼んでいた。

その親方の息子から声がかかり、そこで働くことになった。

ちなみに若社長も、あの測量会社の元社員であり、僕たちはかつて一緒に現場に行ったこともある旧知の仲だった。


親方が震災復興のお手伝いに行くということで、人手が足りなくなったらしい。

とはいえ、僕には測量の知識は、ほとんどない。

もちろん、それを知っていての採用なのだから、不安を抱くことはそれほどなかった。


初日は、大きな段差のある土地の測量に参加した。

着いた現場は、広く、どこを見渡しても背の高い雑草で覆い尽くされていた。

僕の最初の任務は「法下のりした」と呼ばれる段差の下部の草刈りだった。


この日は、とにかく暑かった。

炎天下での作業で頭がボーっとするが、それでも刈払機で、ただただ草を刈り続けた。

こういう作業は、まあまあ慣れている。

気づけば、法下には悠々と歩けるだけの、長く確かな道ができていた。

車に向かい、その道を一歩一歩踏みしめると、努力が報われたと感じた。


二日目にはもう、あのカメラのような器械を扱うこととなった。

トータルステーション、通称「TS」は、レーザー光を使って距離や角度を測定し、地形や建物の正確な位置を記録する測量機器である。

「ミラー」と呼ばれる反射器を持った作業員が観測点に立ち、僕がトータルステーションのピントを合わせ、ミラーに向かって光波を発射して観測をする。

すばやく正確に、まるでスナイパーがターゲットを狙うように、この作業を行う。


その作業自体は楽しいのだが、器械設置から野帳の入力など、どれか1つのミスがその日の作業すべてを台無しにするほどの重い価値を持っているため、常に高い集中力が求められた。

一日の作業はあっという間に感じられ、数日ごとに違う現場をこなす日々は、刺激と達成感に満ちていた。


この会社で働き始めて半年が経った。

そろそろ竹刈りの季節がやってくる。

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