派遣社員(運送業編)

以前、お世話になった派遣会社の女性から、突然の連絡があった。


彼女の声は少し焦りを含んでいて、「急遽人手が必要なんです。次の人が見つかるまでのつなぎでいいんで、来てくれませんか」とのことだった。

ずいぶん正直な人だなと思いながらも、派遣先が実家から近い運送業の会社だということもあり承諾した。


派遣先の会社名には「梱包」という言葉が含まれていた。

運送業とはいえ、ここでは荷物を梱包するための作業が中心となった。


材木をパネルソーや電動のこぎりを使って、荷物に合わせてカットする。

その後、カットした木材を釘打ち機でしっかりと接合し、頑丈な木枠に仕上げる。

この木枠で製品を守ることで、運送中の振動や衝撃に耐えられる「積荷」が完成する。


今回、僕が呼ばれたのは、ブラジル人が辞めるための穴埋めだったらしい。

ラモスは気の良い奴で、職場でも頼りにされていた。

そのラモスが故郷に帰るらしい。


僕はラモスに、知り合いのブラジル人の名前を挙げてみた。

すると驚いたことに、ロベルトのことを知っているというのだ。

ロベルトにそれを伝えると、もちろんラモスのことを知っていると答えた。


なんてことだ、世間は狭い。

まさか、二人が知り合いだったとは……いや、待てよ。

ラモスもロベルトも、どちらもブラジルではよくある名前ではないのだろうか。

日本でいう「鈴木さん」と「佐藤さん」が知り合いかどうかを確認しているようなものかもしれない。

二人は果たして、本当に知り合いだったのか?

今では真相を知ることはできないが、僕はずいぶん怪しい話だとにらんでいる。


契約期間はわずか二ヶ月の仕事だったが、また新たな経験を積むことができた。

派遣先に感謝を伝えると、僕が辞めるということに担当者は驚いていた。

派遣会社は、僕に続けさせるつもりだったらしい。

話が違うと伝えると「じゃあ、辞めていいよ」と、お許しが出た。


その後もその派遣会社から二度、他の派遣先の提案を受けたが、丁重にお断りさせていただいた。


実は、その後、違う二軒の派遣会社にも登録し、それぞれ一度ずつ派遣されたことがあった。

しかし、その二度ともが期待を裏切るような仕打ちで、失望した。

派遣という働き方に対する信頼が揺らぎ、もう派遣会社には関わらないようにしようと心に誓った。

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