派遣社員(製造業編)

次の仕事も無料求人誌とハローワークで探した。

仕事を探している中で、派遣社員という働き方を見つけた。


勤務地は地元だが、派遣会社は隣の市にあったので、登録のためそちらに向かった。

派遣会社の担当はインチキっぽい風貌の男だった。

なぜか男はハローワークで紹介された仕事ではない勤務先の話をしてきた。

そういうものか?と思ったが、そういうものかも知れないので素直に話を聞いていた。


勤務先の現地案内は女性が担当することになり、車に乗せられて女性と二人で勤務先まで連れて行ってもらった。

落ち着きのある女性だったが、入社したばかりのようだった。

「偉そうな態度がそう思わせるのだ」、と言われたことがあるらしい。


作業場に着いたが特に説明はなく、ただ散歩をしただけの案内だった。

派遣会社に戻るとインチキ男が慌てていた。

ハローワークから来た僕に、別の派遣先を紹介したのが、まずかったらしい。

それでも僕の派遣先は変わらず見学先の作業場に決まった。


拘束時間は7時から19時の12時間。

作業場は実家とボクシングジムの中間にあり、通うのには良い場所だった。

仕事を始めて分かったことは、派遣先の社員と僕以外の全員がブラジル人だということだ。

問題はこの日本人社員だった。


だからインチキ男は、僕をここに派遣したかったのだ。

日本人社員のせいでブラジル人がどんどん辞めていってしまうらしい。

1日頑張れば御の字、最悪1時間もせずに帰ってしまう人もいたようだ。

日本人の僕が派遣されたことで、日本人社員はご機嫌になりブラジル人にも優しくなっていった。


ブラジル人は、よく僕に日本語を習いに来た。

休み時間は、もっぱら日本語教室だった。

改めて細かい日本語の説明を求められると、これがなかなか難しい。

あーでもないこーでもないとコミュニケーションを取りながらの日本語教室はとても楽しかった。


業務内容はFRP製の浴槽の製造だったが、仕事がキツくこの間ボクシングジムには行けていなかった。

契約は延長せず最短の3ヶ月で、この仕事を辞めることにした。


陽気なブラジル人との交流は楽しく有意義なものだっただけに、辞めてしまうのは悔やまれたが、まぁしょうがない。


少し楽観的に考えられるようになったのは、ブラジル人たちのおかげかもしれない。

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