試合結果
アマチュアボクシングの初めての試合は、惨敗に終わった。
無敗のまま世界チャンピオンになるというイメージを抱いていた僕にとって、その敗北は耐えがたいものになるはずだった。
悔しさに手が震える……ということはなく、その日も相変わらずTVゲームは楽しかった。
思い返してみると、僕は勝ち負けに無頓着だったのかもしれない。
当時は、そのことに気づいていなかったが、もし本当にそうならボクサーとしては致命的である。
負けん気が強いというわけではなく、負けず嫌いということでもない。
悔しくないわけではないが、負けてもしょうがないと受け入れることは、昔から得意だったのかもしれない。
「人を殴って褒められるからボクサーになった」と言っていた勝気なファイターがいたが、僕には到底思い浮かばない発言だった。
ちなみに、ファイターとは近い距離で激しく殴り合う好戦的な勇気ある選手のことである。
この発言を尊敬するかと言われれば、もちろん尊敬はしない。
しかし、もし悪役を演じるボクサーとしてのパフォーマンスであったのなら、あの発言には学ぶべき何かがあったのかもしれない。
この頃にロト6を買い始めたのは、自分には覚悟が足りず、チャンピオンになれないことを察していたからかもしれない。
だが、そんなものを買っても、もちろん当たるはずがなく、貯金は減っていく一方だった。
仕事をしていない日々は、時の流れが一層早く感じられた。
そんなある日、ボクシングジムの会長が経営する会社で問題が起きた。
その会社にはフィリピン人トレーナーも勤めていたのだが、ある施設で外国人であるというだけの理由で入館を禁止されたらしい。
そこで、日本人のアルバイトが急遽必要となり、僕に白羽の矢が立ったのである。
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