娯楽業

時給に釣られて、僕はパチンコ店の面接を受けに行った。

怖い顔の店長が、僕の履歴書を見て笑っている。

どうやら、地元が近いと言うのだ。

まあ、よくある話だと思っていると、店長が自分の実家の詳細を語り始めた。

……本当に近い、お互いの実家はわずか250mしか離れていない。

地元から250km離れたこの地で、僕たちは巡り会ったのだ。

これはきっと運命だ、と思ったかどうかは知らないが、採用が決まった。


僕はパチンコもスロットも、一度もやったことがなかった。

何も知らない僕を、店長は厳しく躾けてくれた。

この恨みは、そうそう消えるものではない。

マイクパフォーマンスは恥ずかしかったが、もうやるしかなかった。


お店にはいろんな、お客さんが来ていた。

多くは良いお客さんだったが、なかには態度の悪い客もいた。

負けると、腹いせにトイレを詰まらせるおばさん。

何をしたかは知らないが、店長に首根っこを掴まれ引きずり出されたおじさん。

この2人は、出入り禁止になった。

もちろん、他にもお客さんはたくさん来ており、お店は賑わっていた。


やがて、勤めているパチンコ店が、”グランドオープン”を迎えた。

僕には、その意味がよく分からなかったが、県外からもたくさんのお客さんが訪れ、大盛況となった。

知らない世界の知らないイベントを、身をもって体験させてもらった。


しかし、このパチンコ店をグーグルマップで見てみると、今は大型電気量販店になってしまっていた。

あのパチンコ店に関わってくれた人たちの想いまでも無くなってしまった気がして、微かな孤独感を覚えた。


店内には、たばこの煙が漂い、白く霞むことがあった。

煙のにおいに父を思い出すこともあったが、プロボクサーを目指している手前、あまり良い環境とは言えなかった。

同僚たちは、ここでもいい人ばかりだったが、長く居るところではないと感じていた。

アマチュアボクシングの大会への出場が決まり、これを理由にパチンコ店のアルバイトを辞めることにした。

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