第4話 明日は、休みや。

 集中講義は、前2日が午後から、後2日が朝からの設定になっている。別の講座には、その逆の設定になっているものもある。聞けば、遠方から招聘している講師の講座で火曜に開講するものは初日と2日目に昼から、3日目以降を朝に設定することで講師の日程の弁を図っているらしい。

 水曜日の講義を終えると、翌木曜日は朝からということになる。

 ラウンジで一通り仕事を終えた後、石村教授は八木青年に申し渡した。

 時刻は19時前だが、まだ外は明るさが残っている。もっともこのホテル内は冷房完備のため、瀬戸の夕凪からくる暑さとは無縁の場所である。


「というわけで、ハチキ君、明日は君、休みを差し上げます。ただでさえ訳の分からん話を聞いても仕方なかろうし、今日の話は重かったであろうから、ゆっくり休んでくれたまえ」

 教授のお言葉に、専門外の文系学生はありがたがることしきり。

「ありがとうございます。明日は折角なので、一日ぶらりとして参ります」

「それは結構である。広島の街でもぶらぶらしてくるか。折角なら宮島にでも行ってきたらどうか。この前の電停から乗換なしで行けるみたいや」

 そういって、教授は翌日の軍資金をいくらか青年に渡した。


 かくしてその日の仕事は終わった。

 翌日は朝食を兼ねて少しだけ打合せをした後、教授は路面電車で大学のキャンパスへ向かった。

 一方の八木青年は、電停のホームで別の電車に乗って宮島を目指すことにした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る