第20話 赤い力

「ス、ステータス!!」



―――――

名前:稲井力哉


職業:ゴリラ=ゴリラ(進化可能)


レベル:58


生命状態:普


HP(全攻撃力・全防御力に依存し変更、減少する値):630/730


攻撃力:540(筋肉解放中値:1540)


魔法攻撃力:0


防御力:775(筋肉解放中値:2775)


魔法防御力:775(筋肉解放中値:2775)


幸運値:50


クリティカル率:10%



基本スキル:拳闘術LV1、武器依存攻撃力付与LV1、鑑定LV1、鑑定阻害LVMAX


スキル:ドラミングLV3、握力コントロールLV2、筋肉収縮LV2、増強筋肉全解放LV2、増強筋肉部分解放LV1投擲強化LV1、怒気LV1



習得魔法:習得不可



握力値(限界値突破状態):【V】



自動ドロップ収納ボックス:アルミラージの角×10、アルミラージのもも肉×20、三つこぶ牛カルビ×15、死突バットの角×5、クロトゲトカゲの墨袋×20、ミニゴブリンの角×20、ミニゴブリンの耳×50



踏破ダンジョン:【指揮官とお馬鹿な戦闘狂たち(難易度E)】

―――――



「ま、まだ、58かよ……結構倒したってのに……」


「おいおいまだ9階層だぞ!? その立派な筋肉は見かけだけなのか?」


「くそ、馬鹿にしやがって……。ってかあいついくらなんでも元気過ぎるだろ」



 血人形と血原に追いかけられ始めてずいぶん経ったが、レベルアップ回数は2回、現在の階層は9階層。


 そして俺のスタミナは残り10パーセントってとこ。



 俺は探索者になる前から体力の向上を目的として毎日ランニングをしていた。


 だから長距離走に関してはそこそこ自信がある方。


 それでも、スキルを使った状態に関わらずこのざまだってんだから俺以外の奴ならとっくにリタイアしてただろうな。



 そう思えば血原の相手が俺だったのはある意味で良かったような……。



「いや、だからってこれは俺が貧乏くじ引かされすぎだろ」


「おらおら足が止まってんぞ!!」



 挫けそうな気持ちを奮い立たせて俺は足を動かす。


 まだか、ボスはまだなのか?


 ボスなら今よりもっと多く経験値を稼げるはず、そうなればレベルもがっつり上がってくれるはず。




「――よし、それじゃあ行くぞ」


「「「おう!」」」




 ボスに希望を抱きながら進んでいると視線の先に4人の探索者が見えた。


 それはスキルレベルの上がったドラミングでの効果で上昇した視力だから捉えることのできた姿。


 距離で言えば数キロ先の存在。



 初級ダンジョンとは比べ物にならない広さではあるものの現在の比較的ひらけた地形のおかげでさっきからちらちら他の探索者の姿を捉えることができている。


 1階層に比べてその数が多いことからボスに負けて滞留している、或いはこれからボスに挑もうとしている、そんな探索者が多いのだろう。



「……ってそれまずくないか?」



 ボスのいる階層は1度に入れる数を決めることができ、一定時間その人、そのパーティーだけがボスに挑めるという仕様になっている。



 まったくそんなシステムにする当たりダンジョンってのはつくづくゲームらしさが強くて面白い、と考えている場合じゃない。



 つまりはだ、視線の先にいる探索者たちが10階層に入ってしまえば俺は一定時間、ここだと10分程度留まることが確定する。



「そうなれば、最悪だ」



 俺は疲れた足をなんとか速めて10階層に急ぐ。


 そしてドラミングのスキルレベルを無理矢理高めるためにHPが削られるのは知っているがそれでも胸を連打連打連打連打連打。



『ドラミングのスキルレベルが4に上がりました』



「よし! これでもっと速度を――」





「きゃああああああああああああああ!!!」


「うわああああああああああああああああああ!!!」



 ドラミングのスキルレベルアップのタイミングで想定していないことが起こった。


 

 というのもボスに負けてボロボロの探索者がいるというのに想像以上の数のモンスターが集まってきてしまって……そんな探索者にまでモンスターは攻撃を仕掛け始めたのだ。



 自分が起こしたことだから助けないわけにもいかない、けど……。



「た、助けて!!」


「くっ! しゃあないか……」



 断腸の思いで俺は10階層に向かうパーティーを見送って血人形から逃げつつも探索者たちを助けることに。



「はぁはぁはぁ……最悪、だ」


「あ、ありがとうございます! なんてお礼を言えばいいか……」


「い、いえ、それよりここを離れた方が――」


「はははは!! いいぞ!! 訓練の味付けとして最高のシチュエーションじゃねえか!」



 怪我のせいで直ぐにその場を離れられない探索者たち、続々襲ってくるモンスターたち、血原人形と木の上に隠れて高笑いする血原。


 全然最高のシチュエーションじゃねえよ、こんなの――



 カシャ。



「す、すご……」


「は?」


「す、すみません! でもこんなに凄いのは始めて見たので! 恩人の英姿を撮らせてください!」



 俺がモンスターたちを倒しているとダンジョンの中とは思えない機械音が耳をつんざいた。


 どうやら助けた探索者たちが俺の戦闘を録画し始めたらしい。



 ダンジョンでスマホを使うことは確かに問題ないけど……そんなに余裕あったならさっさと逃げてくれよ!!



「あはははは! こりゃあ恥ずかしい姿を見せられないなあ! もっともっとみばって見せろや!!」


「お、おまえ、じゃなくて血原さん……あとで覚えててください!!! ……って、なんだよ、これ?」



 込み上げる怒りに震えてると視界に赤が混ざり始めて……。




 ぶち、ぶち……。




 俺は次に殺したいと思ったモンスター2匹を自分でも信じられない速さで掴み、あっという間に絶命させていたのだった。

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